ツアー・ダウンアンダーには、本場ヨーロッパのレースとは全く異なる大きな特徴が1つある。それは各プロチームがチームバスを用意していないということ。
現代のロードレースではなんでもありの豪華で巨大なチームバスが当たり前に活躍しとるわけで、そのチームバスがないと選手やスタッフはめっちゃ困るんちゃうの?不便ちゃうの?と思うけど、実際は選手たちにとても評判がいいらしい。
なぜツアー・ダウンアンダーでチームバスのないことをプロは歓迎しているのか?
情報源:Tour Down Under’s lack of buses pleases riders
ツアー・ダウンアンダーとチームバス
①最初にチームバスを導入したプロチームは?
プロチームがチームバスを導入し始めたのは1980年代。昭和の真っ只中。日本が経済・文化ともに黄金期を迎えるそのスタートあたりか。
プロチームで、いろんなことができる今風の「複合的で本格的なチームバス」を初めて導入したのは、オランダのかつてのプロチームPDM。
その後、1990年代には全てのチームが現代的なチームバスを持つようになった。
② ツアー・ダウンアンダーとチームバス
さて、そんな普通にロードレースにおいては必需品となった豪華なチームバスやけど、実はツアー・ダウンアンダーでは使われてない。
たとえば、↓の2つのTwitterを見てほしい。チームSkyとチームEFのやつ。
Riders ✅
— Team Sky (@TeamSky) 2019年1月15日
Bikes ✅
Race cars ✅
Sun cream ✅
All the prep for a very warm stage one of @tourdownunder done and we’re away! 🇦🇺🚴🏻♂️👌 pic.twitter.com/If06iumf83
#TourDownUnder stage 2 through the 📷 lens of @harperjojo @Mitch_Bowen placed @rusty_woods in the perfect position near the front of the peloton, allowing him to avoid a final kilometer crash. @_TomScully_ + @McLAYDan hit the ground but escaped without injury. pic.twitter.com/JFUvvVP3UP
— EF Education First Pro Cycling (@EFprocycling) 2019年1月16日
バスじゃなくて小さなバンみたいな車を使ってる・車に乗ってるのがわかると思う。あの金満チームSkyですらチームバスは持ってきていない。また、地元チームであるMitchelton-Scottですらチームバスは持ってきてない。つまりみんな条件は同じ。そういうルールがあるわけやね。
ヨーロッパからバカでかいチームバスをオーストラリアにまで持ってくるのは、船で運ぶしかない。オーストラリアでチームの拠点(支店)を持って、そこに最初から置いておけば別やけど。
チームSkyの中の動画
本拠地がヨーロッパというチームがほとんどで、しかもヨーロッパのレースばかり転戦するわけで、わざわざシーズンインのツアー・ダウンアンダーだけのために、オーストラリアに支店を設けるのもコストの無駄というもの。ただでさえ、チームSkyは別として、予算が厳しいチームばかり。そら、無理やで。
といわけで、チームバスは使われてない。その代わり、レース前の移動とか、レース後の移動は、レース主催者側が大きなバスやバンを用意して選手を運んでるんよ。そういう仕組み。
みんなどのチームも同じ条件で、しかも主催者側もそういった代替手段を用意してるし、ステージ間の移動も少ないようにコースが設定されてる。せやから、利便性という点でも不都合はないんやね。
#TourDownUnder stage 2 through the 📷 lens of @harperjojo @Mitch_Bowen placed @rusty_woods in the perfect position near the front of the peloton, allowing him to avoid a final kilometer crash. @_TomScully_ + @McLAYDan hit the ground but escaped without injury. pic.twitter.com/JFUvvVP3UP
— EF Education First Pro Cycling (@EFprocycling) 2019年1月16日
そうすると、選手からしたら不便ちゃうの?とも思える。レース前も↑のように、バンなら座席も狭いし。しかし、選手からはなぜか好評。

その理由はというと、情報源記事ではヘーシンクの言葉が、それを象徴してる。ヘーシンクはこう言う。
“It’s also the charm of cycling. There are some big stars, but here, they are sitting inside a little van,” “It’s how cycling should be. It’s close to the fans. When we walk to the morning in our flip-flops to the tent area, the fans can see us and they talk to us. It’s very nice.”
訳「これもまたロードレースの魅力の1つよ。ビッグスターがいるけど、ツアー・ダウンアンダーではみんな小さなバンの中に座ってるわけ。それこそがロードレースのあるべき姿やろね。つまり、ファンとの距離がチームバスに隠れてる場合と比べて近いんよ。朝サンダルを履いてチームテントまで歩いてるときも、ファンはワシらの姿を見られるし、話しかけたりもできるわけ。それってめっちゃすてきやん」
大きなチームバスで、しかも窓に色がついてるバスの中にいると、選手たちの表情やレース前後の様子がファンからはわかりにくい。
ツアー・ダウンアンダーでももちろん選手たちとファンは柵とかで区切られてるわけやけど、小さなバンに座ってたり、外でくつろいでたりという姿は、ファンとしては、心理的にもかなり選手との距離を近く感じられるわけで、ファンサービスの一環であったりその向上にも資するはず。
まさにそんなファンとの距離の近さ、交流のしやすさこそがツアー・ダウンアンダーの特徴だと言えるわけやね。