ツアー・ダウン・アンダー最下位の選手について
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シーズンインをつげるオーストラリアのツアー・ダウン・アンダーが終わった。優勝したのはTrek-Segafredoのリッチー・ポート。それは、最下位の選手は一体だれか?気づいているかな?今回は、そんな最下位だった選手について書く。
なぞなぞ?最下位は最上位
今年のツアー・ダウン・アンダーの最下位は最上位の選手である。つまりロードレース界の王者が最下位だった。意味わからん?これを見ればわかる。
おわかりいただけるだろうか?そう、今年の最下位は世界王者マッズ・ピーダースン(Mads Pedersen。以下マッズ)である。よって、最下位が最上位。謎は全て解けた?
さて見事世界王者に輝いたマッズ。その就任後は世界が一変した。世界王者として知名度も注目度も一気に跳ね上がり、メディアや大衆に囲まれる日々。さぞやニコニコと楽しい日々かと思うとどうもそうではないもよう。というのも、ツアー・ダウン・アンダーでの様子を海外メディアが次のように伝えている。
情報源記事:Mads Pedersen, the reluctant world champion
王者の憂鬱
情報源記事は次のように世界王者の様子を伝える。
Watching Pedersen in Adelaide, it’s clear he’d like nothing more than to fade quietly into the background; to be left in peace to do his job. But that’s a little hard when you’re wearing the rainbow jersey.
訳「アデレードでのマッズを見ていると、明らかに彼は、静かにただの背景になろうと(モブになろうと)していただけだった。レースに集中するため静かに1人になりたいと願っているようだった。でもアルカンシェルを着用してる以上、それはちょっと難しい」
誰もが世界王者の周りに集まる。それほどアルカンシェルジャージは特別な存在。全ての選手や周囲の人間からリスペクトを払われる存在であり、注目される選手。たとえ何もなくてもインタビューがやってくる。サイン攻めに遭う。
さらに常に側には、おつきの人間(チームスタッフ)がいる。彼を野次馬から守るために。とにかくレース前後でいつも周囲が騒がしい。集中できる環境にない。
これがピーター・サガンやアレハンドロ・バルベルデならばそんな環境は、世界王者になる前から当たり前なので慣れっこ。そんな雑音の中でもどうやって集中するか自分のやり方を確立している。しかし、マッズはこれまでそんな経験がない。いきなりの世界的スターになってしまった。知識としてはどうなるかわかっていても、実際に体験してみるとどんどん鬱陶しいと感じるようになるのも仕方ない。
情報源メディアは、「ツアー・ダウン・アンダーでは気軽に話せる雰囲気ではなかったね」とも書いている。
本人としてもだいぶ周囲の雑音にイラついていて、でもそれと付き合わざるを得ない。そんな状況に必至に耐えているという段階やろね。イライラしてるけど、それを表には出せない。それを出せば世界王者という格を自分の手によって下げてしまうことになる、世界王者へ向けられるリスペクトを邪険に扱うことにもなる。誰もが夢見る世界王者の価値をマッズが貶めることになる。我慢しなければならない。
そんな不自由な状況にまだまだ慣れていないようやね。シーズン前とシーズンイン後ではやはり「集中すべきレースがある」という点で決定的に状況が異なってるからね。シーズン前は上手く対処できててもそれはあくまで別の次元での話。
こういったことも、よく言われるところのアルカンシェルの呪いの1つなのかもしれへんね。
とにかくマッズはこういう状況において、「どうやって自分自身をコントロールするか」を学ばないとアカンね。そしてそれが出来るようになれば、その知恵は今後の選手生活に活かせるはずやしね。