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今年の世界選手権のロードレースで英国チームは、おそらく強豪国で最も若いチームを送り込んだ。キャプテンとなったルーク・ロウ(Luke Rowe)を除けば、21~26歳までの選手しかいない布陣。よって明らかに優勝を狙うわけではなく、経験を積ませること目的を明確に設定したチーム編成だった。もちろん各国も英国を優勝候補とは考えていなかったであろう。
その英国代表チーム中には、今年の世界選手権で初めてエリート男子カテゴリーのロードレースに出場したイギリスの天才、トム・ピドコック(Tom Pidcock)がいた。後半まで先頭集団に残っていたが、最後のペースアップで脱落。そんなピドコックの世界選の感想は?
“It was one hell of an experience,”
訳「とてつもなく素晴らしい経験ができた」
“We didn’t get any result but for such a young team, we’re here to learn, Luke [Rowe] did an unreal job to keep me at the front as if I was here to win, which is good for the future.”
訳「英国チームは結果は残せなかったが、とても若いチームとして経験を積むために参戦した。ルーク・ロウはあり得ないようなすばらしい仕事をこなしてくれ、ずっと先頭集団に残っていられた。まるで優勝を狙って戦っているようだったね。今回の世界選は将来にとってかなり有益な経験になるものだよ」
上述のように英国代表チームは若い選手を揃え、経験値を獲得するために参戦してきた。しかし、だからといって全力で戦わなければ、得られるものなどなにもない。仮に最初から諦め、手を抜いた状態で何かを得られたとしてもそれはまやかしであり、嘘っぱちの空虚な経験でしかない。戦場で役立つ経験は、本物の戦場でしか得られない。
そしてチームの作戦も、できる限り先頭で展開しろという指示だった。ルーク・ロウは若者の守護神として身を持って、ロードレース界最高峰の先頭集団というものを若手に経験させたのだ。トップレベルのプロトンの先頭で走るとはどういうことか、どういう知恵が必要なのかをその背中で語ったに違いない。
ロードレースにおいて、エリートレベルとそれ以下のU23やジュニアとの決定的な違いは、レースの走行距離である。エリート男子ならば200km以上は当たり前、250km以上も普通に登場する。
そこでエリート男子の世界で走るならば、必ず250~300kmを「戦いながら」走り切る技術と知恵が必要になる。今回そのレベルに初挑戦となったトム・ピドコックにはそれが決定的に足りていなかった。曰く、「最後の周回ではもう力は空っぽだった」と。驚異の天才といえど、まだ250kmを超えるレースでしかも最高峰のプロトンで戦い抜く知恵は持っていなかった。
来年からイネオスのメンバーとしてワールドツアーに参戦するであろうピドコックは、だからこそ今回の経験が今後のロードレースに役立つと考えている。
“It’s just a matter of time, get the legs and endurance to be able to race the full distance, not just ride the last lap,”
訳「でも単に時間の問題でしかないね。経験をつめばワールドツアーレベルの長距離レースで戦える脚と耐久力は身につけられるだろうね。もちろん最後まで勝利に絡める脚という意味でね」