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ロードレースのプロチームのスポンサー料はいくらか?スポンサー料高騰の背景は?

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今回はプロチームの機材、特にロードバイクを提供するバイクメーカーのスポンサー料についての記事のご紹介。

ワールドツアー(WT)レベルのプロチームのバイクメーカーのスポンサー料はいったいいくらなのか?

情報源:200 bikes and a lot of cash: What it costs a bike brand to sponsor a WorldTour team

情報源記事によれば、今回の記事の内容は、ワールドツアーのプロチームでロードレース業界の一員としてで二・三十年働いているPaoloというおじさんへ取材したときのメモを基に作られている。

ただ今回の記事で完全にスポンサー料の内情の奥深くまで迫れたわけやない。なんでかというと、ドーピングと同じく、スポンサー契約に関する情報はトップシークレットやから。そこにはシチリアマフィア風にいえば、「血の掟(Omertà。オメルタ)」があるからや。たとえ内情を知っていても外部においそれと情報を漏らすわけにはいかへん。

せやからこのPaoloおじさんも、あくまで完全な暴露じゃなくて情報を取捨選択したうえでの証言やということな。

ほな、みていこか。


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(1) 「プロトン全体」でのバイクメーカーのスポンサー料の今昔

① 現在のプロトン全体でのバイクメーカーのスポンサー料

Paoloおじさん曰く、ツール・ド・フランスに出場するチームに関して、バイクとか機材を提供するスポンサーに限っての話やけど、

“About 80 to 120 million for the whole peloton. WorldTour plus the invited Pro Continental teams. That’s in euros, not dollars.”

訳「およそ全チーム合わせて、スポンサー料は8000万~1億2000万ユーロや。これはツールに出場するWTチームとプロコンチームの両方を合わせてな。ユーロやで、ドルちゃうで」

今の為替でいえば、8000万ユーロは100億円。1億2000万ユーロはその1.5倍で150億円や。

ただし、上述のようにバイクとかの機材を提供するスポンサーに限定しての金額な。それら以外のアイテム・グッズを提供するスポンサーとかは含まれてない。

② 昔のスポンサー料

なお昔については、Paoloおじさんはこう言ってる。

“Title sponsors such as ice cream or washing machines or the national lottery, they brought in all the big money. The cost of being a bike sponsor was relatively cheap, maybe 1 to 1.2 million euros.”

訳「昔はタイトルスポンサーといえば、アイスクリームとか洗濯機とかの企業、あるいは公営ギャンブル団体やったんや。それらが、えらいぎょうさんのお金を提供してくれてた。せやから、それら以外の会社であるバイクメーカーが出すスポンサー料は比較的安く済んでたんや。たぶん100万~120万ユーロ程度や」

バイクメーカーが負担せなアカン金額は、今は8000万~1億2000万ユーロ。昔は100万~120万ユーロ。えらい違いますな。


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(2)スポンサー料に影響を与えた3つの大きな出来事

20世紀終盤からロードレースの人気が下り坂となる。

みんなも知ってのとおり、この時期からアメリカ資本の巨大スポーツ企業Nikeの世界戦略・成長に影響されて、ヨーロッパのスポーツシーン、特にサッカーやね、サッカー界のアディダス、プーマ、ナイキの3つ巴大戦争が勃発。結果、サッカーは、メディアへの露出と若者へのアピールが激増することによって、不動の圧倒的人気を得て今に至るわけやけど。ベルギー以外は。

そんなロードレースの人気の低下と関連して、そんな20世紀終盤から現在までのロードレースのスポンサー料に影響を与えた3つの大きな出来事がある。それが次の3つ。

① ドーピングスキャンダル。特にランス・アームストロング

これはもうみんな知っての通り。ロードレースのイメージが悪くなり、いろんなスポンサーが次々と撤退。あるいは撤退しないとしても、これまでのように大金を負担してくれることは少なくなった。

そうすると、ロードレースがないと生きていけないバイクメーカーが負担する額が増えることになる。他の業界の会社が負担してくれへんからね。

となると、バイクメーカーはそのために資金が必要になる。その資金はどこから?銀行から?

いいえ、売り上げから。

すなわち、製品の値上げや。今のロードバイクの価格が高騰しとる基本的な理由はここにある。

② MTBの人気の低下。販売量の低下

2つめとしてPaoloおじさんが挙げる出来事がこれ。

アメリカでその頃MTBの人気が低下し、アメリカのMTBメーカー売り上げが落ちてた。そこでそんなアメリカのメーカーは、ヨーロッパのロードレース市場へ、ロードレース業界に参入しようと考えた。

その頃アメリカ人は自転車といえば、「ツール・ド・フランスしか知らん」みたいな状態やったけど。

というわけで、アメリカ企業にとってヨーロッパのロードレースの価値が上がる。参入者が増加すると、オークションと同じようなもんで値段もあがる。

そして最初にアメリカ企業としてロードレースで成功したのが、カンノンダレことCannondale。この成功を受けて、TREK、Specalized、アメリカじゃないけどGiantも参入してくるわけやね。

で、またスポンサー料が上がっていくと。

③ UCIの変化

最後に3つ目として、UCIの戦略が変わったことがある。

UCIは2005年に、プロツアーのデザインを変革させた。モータースポーツであるF1業界が採用してる業界のモデル・デザインや収益構造を真似したんや。

強い選手による競争がより激しくなるように、よりおもしろいレースになるように。結果としてそれらがロードレースというスポーツの競技レベルを引き上げることに成功した。

一方でそれは有力選手の年俸をも上昇させたわけや。このへんは、サッカー業界の同じやね。トップ選手の年俸・契約金・移籍金はうなぎ登り。

選手にとっては嬉しいやろうけど、税金対策も必要。同時に税務当局による監視が厳しくなり、メッシみたいに脱税で有罪確定する危険性も多くなる。うさんくさい税務コンサルタントとかが直接に接触してきたり、親族がコンサルタントに騙されたりとかもありそう。将を射んとする者はまず馬を射よ。急がば回れ。

ま、金持ちも大変やね(鼻ホジ)


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(3) 各チームごとのバイクメーカーのスポンサー料

上述(1)のように、バイクメーカーのスポンサー料は、プロトン全体(WTプロチーム+プロコンチーム)で8000万~1億2000万ユーロやった。

ではチーム1つ1つのスポンサー料、予算はというと、プロトンにはだいたい20ぐらいのチームが参加しとるから、20で割るとええ。それでチームごとのバイクメーカーが負担するスポンサー料の平均が出る。あくまで平均やけどな。で、20で割るとだいたい400万~600万ユーロやな。

情報源記事中では、こう書いてある。

bike-sponsor fees soared to the current range of €3.2-4.5 million (USD$3.4-4.8m), more than triple what they had been 20 years before.

訳「バイクを提供するメーカーが負担するスポンサー料は、現在では320万~450万ユーロにまで上昇しとる。20年前にバイクメーカーが予想してた額の3倍以上やで」

今の為替でいえば、320万ユーロ=4億円、450万ユーロ=5億6000万円。うひょー。

さらに、Paoloおじさんは言う。

“Slightly less for a strong Pro Continental team, maybe 2.1 to 3.5 million. For a title sponsorship, the total climbs to €6 million. [Co-title], €4-5.5 million.

訳「強いプロコンチームの場合はWTプロチームに比べるとちょっと少なくて、たぶん210万~350万ユーロ。1社だけでチームのメインスポンサーになる場合はスポンサー料として総額600万ユーロ、どっかの企業と共同でメインスポンサーになりたければ、450万~500万ユーロ、という具合にスポンサー料はあがっていく」

(4) メインスポンサーとサブスポンサー

さて、バイクメーカーがチームのメインスポンサーとなって、仮に5億円出資したとしよか。

最近は自転車が人気というても、車業界やサッカー業界とは違ってしょせんはマイナー業界。TREKなども自転車業界ではデカイ会社やいうても、トヨタやナイキとはやはりレベルが違う。

というわけで、5億円の楽に用意したい。回収を楽にしたい。

ここでのポイントは2つ。金銭リスク回避と自社の影響力の確保や。株主会社と株主との関係みたいなもんやな。

テキトーに言えば次のようになる。

メインスポンサーであるバイクメーカーが、サブスポンサーを募集するわけや。チームの代わりに。

5億円用意してチームに支払ったとしても、自分ところだけで5億円用意するとリスクが高い。そこで「500万払ったらサブスポンサーなれるで~」と、サブスポンサーを募集して、サブスポンサーからもスポンサー料を受け取る。10社あつまれば5000万回収できる。リスクは5億円から4億5000万に減る。

こうやってサブスポンサーを集めることで金銭リスク回避という目的は達成できる。

サブスポンサーがたとえばシマノなどコンポ会社、Vittoriaなどのタイヤ会社など、自転車の機材に関する会社ならば、メインスポンサーと仲良しになれる。両者の契約によって、メインスポンサーであるバイクメーカーは、自社のいろんな製品(MTBでも、ママチャリでも)に、サブスポンサーから格安の値段で装備を調達できる。

逆にサブスポンサーは、メインスポンサーに大量に部品を買ってもらえる。チームとのスポンサー契約が3年なら、3年間は安定した売り上げが期待できる。その契約そのものを銀行など金融機関から融資を受けるときの交渉材料、支払能力の証拠にもできるやろう。

一方で、シマノみたいな圧倒的市場シェアをもつ強力なサブスポンサーは困る。そんな強い企業は、メインスポンサーよりも影響力が強いことがある。金だしたのはメインスポンサーやけど、影響力はサブスポンサーのほうが強いとかイヤやろ。

ま、そもそもそんな強い企業はメインスポンサーとの交渉せずに、直接チームと交渉してスポンサーなったりするし。そうなったら、メインスポンサーの言うこと聞きよらへん。それはメインスポンサーとしては困る。あくまで、子分は子分らしく、親分に都合のよい子分じゃないとアカン。

せやからバイクメーカーとしては、某コンポメーカーのコンポを採用してるのが、プロトンのチームのうち2つあるいは3つ・4つ程度とかいう現状は困るわけや。どっかのコンポ企業が圧倒的に強い状況はあまりよろしくない。バイクメーカーにとっては。でもどうしようもないね(呆れ)。

こんな感じで、今はテキトーに簡単に説明したけど、このへんのメインスポンサーとサブスポンサーとの関係、契約条項もいろいろごちゃごちゃ深く、実際の内部関係者じゃないとなかなかわかりらんようやね。いわばブラックボックス。
(関連する過去記事とか、1つ前・後の記事は下のほうにあるで)

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