なぜUCIはすぐにトーン・アールツに制裁を課さないのか?ドーピングと特定物質とは?
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昨日、シクロクロス界に激震が走ったことを紹介した。それはスター選手のトーン・アールツの尿サンプルからWADAの(世界アンチドーピング機構)禁止物質としてあげるレトロゾールが検出されたという内容だった。
これによりアールツは自発的にシクロクロスシーズンを終了させ、他のサンプルからの結果がどうなのか確定するまでは、今後レースには出場しない方針。
一方でUCIはトーン・アールツに対してすぐになんらかの制裁を課すわけではなさそうだ。
情報源:UCI not suspending Toon Aerts over doping positive yet
レトロゾールはより良い筋肉を作ることを促進させたり、アナボリックステロイドの使用を発見させにくくする効果がある。たしかにWADAの禁止薬物リストに入っているが、なぜUCIが処分の発表を遅らせているのかといえば、レトロゾールが「特定物質(specified substances)というカテゴリーにも属しているからだ。
おなじくドーピング物質であるアナボリックステロイドやEPOは即座にUCIから処分が課されるものだが、「特定物質」については、一定の例外が認められてる。たとえば人の体内で自然に作られる物質や普通の食べ物によく含まれているような物質は「特定物質」として認められる。こうしたものはドーピングをしていなくても、検出される可能性があり、潜在的に無罪である可能性が存在しているからだ。慎重な判断が求められるといえる。
そして今回のレトロゾールもそのような「特定物質」であるため、UCIとしてはすぐに処分を課すわけではないというわけだ。他のサンプルからの結果と詳細な分析を待って、慎重に判断しようということだろう。