B&B消滅の真相と詳細
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昨年までProTeamだったB&B Hotels – KTM。同チームは2023年に向けてマーク・カヴェンディッシュなどを獲得し、またパリ市をスポンサーに加え、さらにメインスポンサーとして国際的企業であるフランスのAmazonまたはカルフール(Carrefour)と契約し、新生B&&として活動をスタートさせる予定だった。だがそんな夢が儚く散り果てたのは誰もが知っているとおりだ。
これまでその消滅の過程について詳しいことが判明していなかったが、フランスのルキップ紙(L’Equipe)が、「全てを話すつもりだ」という同チームのマネージャーだったジェローム・ピノー(Jérôme Pineau)からの証言などをもとに、その夢が霧散するまでの過程を報道しているようだ。
目論見の甘さがすべてのはじまり。パリ市との交渉の失敗
それによると、ジェローム・ピノーは、電話会社オレンジの元ジェネラルマネージャーで、またフランスのサッカーのトップリーグであるリーグ1のジェネラルマネージャーでもあったDidier Quillotと協力し、新生B&Bをスタートさせようとしていた。
二人はパリ市と交渉を重ねる。要求は1000万ユーロ(約14億円)の資金を投資してもらうこと。だが、パリ側は法律上そして政治上でも160万ユーロ(約2億2500万円)だけしか出せないと主張。この時点でピノーらの計画の歯車は狂い出す。
もともとのスポンサーが不信感を抱く
さらにピノーらがパリ市と関係を構築しようとしたことがこれまでのチーム支援者を困惑させた。それは、ブルターニュ州だ。
ブルターニュ州はチームB&Bのスポンサーの1つとして毎年5万ユーロ(約700万円)を提供していたが、同時に90万ユーロ(約1億2700万円)もの融資をチームに行っていた。その融資のおかげで、チームはUCIからProTeamとして活動するライセンスを得られていた。
だがチームがパリと交渉していたことなどを含めて、ブルターニュ州は「我々は何も知らされていなかった。2022年5月の段階で、我々はピノーに90万ユーロの融資の返済をどうするつもりかとたずねた。忘れてるんじゃないかと」
ブルターニュ州からすれば「自分とこのチームだったはずなのに、いきなりパリのチームになるのかよ」と寝耳に水。ブルターニュ側の不信感を買うことになったことだろう。両者の信頼関係が崩れ始めたと考えられる。
スポンサーには1年21億円以上、5年契約を要求
ルキップ紙によるとピノーらは合計115の企業にアプローチしていたようだが、その中におそらくアマゾンとカルフールが入っていたのだろうと思われる。それゆえ海外メディアはそれらのうちどちらかがメインスポンサーになるのでは?と報道していたのだろう。
ピノーらが交渉をもちかけていた企業の1つ、フランスの国際コスメ企業Sephoraは「チーム側は、我々に1年1500万ユーロ(約21億2000万円)を、そして5年契約を要求してきた。合意成立に近づいていたこともあったが、結局我々は舞台から降りた」と明らかにする。
パリ市が多額の資金を提供してくれるという目論見がハズレたことで、民間企業により多くの負担を求めざるを得ない状況になったのだろう。
そして結局、大口のメインスポンサーも見つけられずチーム消滅となる。
パリ五輪の前年にワールドチームに昇格し、五輪へ盛り上がるタイミングを好機と見ていたのもあるだろう。だからこそ急いで新生B&Bを誕生させたかったのかもしれない。スポンサーの財布の紐も緩むと思っていたかもしれない。
結果論だが、もう少し上手く立ち回り、少ない予算で我慢していればワールドチームとして新生チーム誕生だけは実現できたかもしれない。ただその場合は有名選手は獲得できなかっただろうし、ワールドチームとしての存続が可能かというとそれは難しいものとなったかもしれない。