ルフェーブル「レムコにチームSkyは6倍以上の金額を提示してきた」。2019年のプロデビューを前にしたレムコ争奪戦について

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝、そして世界選手権ロード優勝で完全に覚醒した感のあるベルギーの至宝、レムコ・エヴェネプール（Remco Evenepoel）。今やクイックステップにおけるグランツールの絶対的エースだ。

そんなレムコについて、彼がプロになる直前の2018年にルフェーブルはチームSkyとの間で絶望的ともいえるような争奪戦を繰り広げていたようだ。というのもチームSkyがレムコに提示したのは、ルフェーブルの金額の6倍以上だったからだ。

🐷「よくチームSkyいかなかったな･･･」

情報源：Team Sky offered Evenepoel six-times more money than Lefevere in 2018

アラフィリップたちと3年契約したのは判断ミス？

レムコの成長速度はルフェーブルの想像を超えていた。ルフェーブルとすればもっとのんびりと育成する計画だった。この点についてはこれまでこのブログでも何度か紹介してきた。

そんな嬉しい誤算ともいうべきレムコの成長だが、ルフェーブルそしてチームにとっては悩ましい問題をも引き起こした。それは、これからジロとツールといったグランツールを狙うレムコのために山岳アシストが必要がたくさん必要になるからだ。

各チームがガチのメンバーを揃えてくるツール・ド・フランスの場合を考えると、現在のクイックステップのメンバーは、UAE、ユンボ、イネオスといったライバルたちと比べると少し弱いと感じるのも確か。

レムコの来年からのツール参戦（今年はジロ）を考えると、強いクライマーの補強は急務となる。

ところが万年金欠で名高い（？）のクイックステップは予算のやりくりが大変だ。本来もっとレムコがのんびりと育ってくれていれば、そんな事態も数年先になるはずだった。だからこそ、今の予算でジュリアン・アラフィリップ（Julian Alaphilippe）やカスパー・アスグリーン（Kasper Asgreen）といったエースと複数年契約での契約更改を完了していた。

しかしレムコの成長がすごすぎたせいで、予想以上に早く補強のための予算が必要となったのだ。アラフィリップたちとの複数年契約がなければ、その補強予算も捻出できたかもしれない。だが契約は契約。アラフィリップにも今後しばらく多額のマネーを支払い続けなければならない。そんな状況でレムコのためのアシストも獲得しなければならない。スポンサーからの投資を増やしてもらうか、スポンサーの数を増やすなども必要だ。

まさにルフェーブルとチームの悩ましい誤算と言えるだろう。

チームSkyとの争奪戦。イネオスの提示額はクイックステップの6倍以上

2018年のジュニア世界選手権において、レムコ・エヴェネプールはロードレースと個人TTの二冠を達成。そして2019年のプロデビューに向けてクイックステップとチームSkyとの間で争奪戦となった。

本来その2018年の時点でルフェーブルは、アメリカの名門チームで、ベルギーレジェンドのエディ・メルクスが息子、アクセル・メルクスが率いる当時のHagens Berman Axeonで育成させる予定だった。

同チームは、テイラー・フィニー、ジョージ・ベネット、ヤスパー・ストゥイヴェン、ジョアン・アルメイダ、テイオ・ゲイガン・ハートなどの有名選手を多く輩出してきたチームだ。

すなわちルフェーブルとしては、いきなりワールドチームで走らせようと思っていたわけではなかった。

そんな彼の思惑を狂わせたのが、チームSkyだ。ルフェーブルがレムコに提示していた金額の6倍以上の金額を提示し攻勢をかけてきた。

そんなチームSkyの動きをうけて、急遽ルフェーブルはレムコの両親と「ボーナスなし」のネオプロ契約をクイックステプとの間で結ぶこととなった。これが、デビュー一年目の2019年でクラシカ・サン・セバスティアンやバロワーズ・ベルギーツアーで優勝してもレムコにボーナスがなかった理由だ。