グランツールのワイルドカード枠が拡大か?
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言うまでもなくツール・ド・フランスはマーケティングという分野において圧倒的なブランド力を持つ。またそれに他の2つのグランツールのジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャも大舞台であることにかわりはなく、メディアや大衆へのアピールという点では大きな価値を有する。
そんなグランツールに出場するのはプロチーム全ても、それらのスポンサー企業にとっても非常に重要なものになる。
そんなグランツールの出場チームは現在は22チーム。ワールドチームが18チーム、ProTeamのワイルドカード枠が4つ。ただ実際にはそのProTeamのうちProTeamランキング1位と2位だったチームは自動的に招待される権利を有しているので、実際には純粋なワイルドカード枠は2つのみとなる。
スペインメディアのMarca紙によるとそんなワイルドカード枠をUCIが拡大させる可能性があるようだ。
情報源:Crece la presión: los equipos empujan para que haya uno más en las grandes
2024年度終了時点のProTeamランキングはその1位~7位までまとめると次のようになっている。
順位 | チーム名 | UCIポイント |
---|---|---|
1 | LOTTO DSTNY | 12579.29 |
2 | ISRAEL – PREMIER TECH | 11723.33 |
3 | UNO-X MOBILITY | 8938.67 |
4 | TUDOR PRO CYCLING TEAM | 5753.33 |
5 | TOTALENERGIES | 4897 |
6 | CAJA RURAL-SEGUROS RGA | 3915 |
7 | Q36.5 PRO CYCLING TEAM | 3603.81 |
上述のようにこのうちLottoとIsraelは今年の全グランツールに自動的に出場できる。ただしLottoはすでにジロ・デ・イタリアに出場しない方針を明確にしている。
さきほどの記事「なぜピドコックは今年のツールに出場しないのか?」においては、ピドコックが2026年ツールに向けてエネルギーを充填するため今年のツールには出場しないことを明言したと紹介したが、彼が所属するQ36.5はProTeamランキング7位であるため、2026年にツールに出場できるかは不透明。このUCIポイントを見るとかなり厳しいだろう。
今回のMarca紙の報道では、すでにワイルドカード枠拡大の声が年々大きくなっているようで、今月後半に行われるUCIの会合にてワイルドカード枠拡大についてなんらかの発表・言及がなされる可能性があるとのこと。
ワイルドカード枠の拡大はプロチームにとってはもちろん、主催者側にもメリットがあると言われる。それはその選定に頭を悩ませる必要性が減るからだ。地元チームを優先したいが、地元チームが複数あれば1つだけに絞ろうとするとなかなかアタマが痛い。いろいろな要望が主催者側に届き、様々な人間が接触してくるだろうから、それの対応も面倒だ。枠が増えればそうした面倒も少し減るかもしれない。
そして報道によると、ジロの主催者RCSもツール主催者ASOもワイルドカード枠増加については前向きらしい。
ただワイルドカード枠の増加はある点では矛盾をはらむ。それはレースの安全性確保という点だ。
今のグランツールは1チーム8人制だったが、かつては9人制の時代もあった。ただ肥大するプロトンでの事故が増えたため安全面から8人制となった経緯がある。もしワイルドカード枠を増やせば再びプロトンのサイズが大きくなるため、そうした現在のシステムになったこととの矛盾が発生する。これは近年UCIが安全性向上をはかりいろいろな方策を導入してきている点とも衝突する。
ワイルドカード枠拡大はこうしたUCIの安全確保政策とどう調和させるのかが大きな問題となるだろう。