ブラッドリー・ウィギンスと思春期の殺人事件目撃。そして今年のツールでのフルームとの関係修復について
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2012年にイギリス人として、また元トラック競技の選手としても初めての快挙となるツール・ド・フランス総合優勝を成し遂げた、自転車界の「サー(Sir)」ことブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins)。
だがその2012年ツールでは当時ウィギンスのアシストだったクリス・フルーム(Chris Froome)が、エースであるウィギンスを山岳ステージで置いてけぼりにしようとしたりするなど対立と確執が話題となった。そして実際に二人の中は決定的に悪いものになった。
だがあれから約10年が経ち、ふたりとも「大人」になった。
そして二人は仲違いして以来初めて今年のツール・ド・フランス期間中にナイトクラブで出会い、多くのことを話しあったようだ。ウィギンス曰く「過去には戻れないが、フルームとの関係悪化は後悔している」と述べる。
情報源:Bradley Wiggins regrets fallout with Chris Froome after 2012 Tour de France
フルームとの対立と原因
今回のウィギンスの告白は、元チームメイトのゲラント・トーマス(Geraint Thomas)がやっているポッドキャスト「 Geraint Thomas Cycling Club podcast」で、ウィギンスが語ったものだ。
多くのことが語られているが、フルームとの確執の原因については当時の自分の精神的未熟さ・幼さを挙げている。
曰く、「当時は精神的に幼く、いろんなことをどうやってコントロールしていいのか、そのやり方がわからずイライラしている状態だった」。
そして今年のツールでは現地のナイトクラブで二人でお互い抱き合い、いろいろなことを話したようだ。
ウィギンスが言うには、それは「一種の解放」だったと。いちおうはフルームとの関係修復(が実際に出来たのかは不明だが)のきっかけとして彼との話し合いができたことで、フルームからもちょっとした「許し」を得られたのではないか。それは過去の過ちの記憶と後悔からの自身を解放することにつながったのだろう。
10代の頃のトラウマ:人殺しの場面を目撃
ツールを優勝した後でもウィギンスはいつも孤独を感じていたようだ。部屋で1人すごす時間が多かったらしい。だからといってそれは楽しい時間でもなんでもなかったようだ。
そしてツール優勝後の全世界的名声・評価を得たことで、精神的にアンバランスとなった。また名声が高くなればなるほど、周囲には彼を批判したり貶めようとする人間も現れる。それらの毀誉褒貶の双方をどうやって扱うべきか、そしてそれに作られた自分という像を扱えばいいのかわからなかった。
自分がわからなくなり、今後何をしたいのかもわからなくなっていた。ツール優勝後は自分を取り戻すのに時間が必要だったようだ。
そんなある意味で不器用な人間といえるだろうウィギンスだが、その不器用さの根源は思春期時代にあると本人は分析する。
というのも15歳のときに彼は殺人事件を目撃している。そのとき学校の校長先生が学校の外で刺殺されたのを目撃したらしい。彼としては絶対に許せない行為だった。そのことが一種のトラウマとなり思春期からの人格形成に影響を及ぼしたのだろうと述べている。
馬鹿を演じるために酒に頼る日々もあったようだ。そのほうが生きていくのに楽だったからだ。本当の自分とは異なる偽の人格を作り上げ、それを演じ続けていた。そしてそのままツール制覇へと駆けていった。
だが今は、そんな「偽物の自分」とは決別し、本来の自分を取り戻して穏やかな状態のようで幸せだと述べる。
なおウィギンスが2歳のときに両親は離婚している。父親とはずっと疎遠だったのだが、その父親は2008年に不審死を遂げている。意識不明の状態で発見されたが、病院で頭部の負傷が原因として死亡。殺人の疑いがかけられていたが、結局誰も逮捕されていない。真相は不明だ。