レビュー
Rapha




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カレブ・ユアンが引退を発表。その引退声明から彼に何があったのかを考える
昨夜驚きのニュースが世界を駆け巡った。今年からINEOS Grenadiersで走り、今年すでに2勝を挙げたカレブ・ユアンが突然の引退を発表したからだ。
Over a decade in the pro peloton and a winner from start to finish 🏆🏁
— INEOS Grenadiers (@INEOSGrenadiers) May 6, 2025
Congratulations on an amazing career and thank you @CalebEwan 👏https://t.co/T0kGkt0DEp pic.twitter.com/ce8XQVs0Uv
今年いっぱいをもっての引退ではなく、昨日の5月6日からすでにもう引退ということになる。そのため今後レースに出場することはない。
カレブ・ユアンは現在30歳。2014年にオーストラリアのワールドチームOrica GreenEDGE(現Jayco-AlUla)に研修生として所属し、翌年に同チームから正式にプロデビュー。これまで11年のプロキャリアをもち、今年はプロ12年目に入るところだった。
小柄ながらも弱虫ペダルの御堂筋くんのような独特なフォームでゴールスプリントの勝利を量産してきた。そこからポケット・ロケットの異名もついた。
モニュメントでの勝利はないが、ミラノ~サンレモでは2位が2回。一方で全てのグランツールでステージ優勝を挙げた。ツールとジロではそれぞれ5勝を、ブエルタでは1勝だ。まだまだ勝てると思われた彼だが、一体何があったのか。今回の引退声明の一部を抜粋して紹介する。
For as long as I can remember, my world has revolved around racing. The intense routine, the sacrifice, the search for constant improvement, the hunger to win — it’s been my rhythm, my identity. But what once felt like everything to me no longer does. The last few years haven’t been easy but in 2025 I found something again — not just legs, but belief — thanks to the INEOS Grenadiers. They gave me space, trust, and the environment to rediscover what I am capable of. I won again. I felt like myself again and I felt respected again. For that, I can’t thank them enough.
訳「記憶にある限りでは自分の世界はレースを中心に回ってきた。日々の激しいルーティン、犠牲、絶え間ない進化の追求、勝利への渇望など、そうしたものが自分のリズムであり、自分のアイデンティティーだった。しかし、かつて自分にとっての全てだったものがもはやそうではなくなった。ここ数年はずっと上手くいかないシーズンばかりだったが、今年は何か再びやれそうな感じがあった。脚の調子のことではなくて、信念という意味でだ。それはイネオスのおかげといえる。イネオスは自分に居場所を用意し、信頼し、そして環境を整え、復活できると再び思えるようにしてくれた。そして実際に自分はまた勝てたわけだ。復活できたと思えたし、再びリスペクトされるようになったとも思った。だから、イネオスには感謝してもしたりない。」
But the truth is that even when I crossed the line first, that feeling — the one you chase for years — faded quicker than it used to. My experiences of the past two seasons, in particular the second half of 2024, has taken a significant toll on my relationship with the sport. I’m happy I didn’t let that period define the end of my career and I am proud of what I achieved in a short but successful time with the INEOS Grenadiers.
訳「しかし、現実には優勝したときですらそうした嬉しい感情は、それをずっと求めいたにもかかわらず、かつてほど長く心に残らないようになっていた。この2年の経験、特に2024年後半の経験はロードレースそのものと自分との関係性に重大なダメージを傷を残したのだろう。自分としては、そんな時期がキャリアの最後にならなくてよかったと思っているし、短期間だがイネオスで走れ、そして勝てたことを誇りに思っている」
つまるところはロードレースで勝利したとしても、かつてほどの情熱が彼を包まなくなったということだろう。たとえば、大好きなラーメン屋があって、腹が減ってどうしもようもなくそこのラーメンを食べたくなったときに、いざ食べてその時は幸せになったものの、店を出てしばらくして「別に食べなくても良かったな」と思うようになるとそのラーメン屋への愛は日に日に薄くなっていく・・・そんな感じなのかもしれない。
結局のところプロ選手を支えるのはそのスポーツへの情熱なのだろうと改めて思う。逆に同じスプリンターだったマーク・カヴェンディッシュがあれだけやり続けたことの凄さ・特異さがわかる。
なお今後カレブ・ユアンが何をするのかは明らかにされていない。