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昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したチーム・ヴィズマ・リースアバイク(Team Visma | Lease a Bike)のアメリカ人セップ・クス(Sepp Kuss)。超級クライマーかつスーパードメスティーク(アシスト)としてグランツールでずっとチームを支え続けてきた選手が、ついにそのエースとしてグランツールの1つを総合優勝した瞬間だった。
そんなセップ・クスだが、そのブエルタ優勝が自身の能力に大きな自信をもたせたようで、「ツール・ド・フランスでも勝てるよ。どうして無理だなんて思うんだい?」と話す。
ツール・ド・フランスといえばチームの絶対的エースは三連覇を狙うヨナス・ヴィンゲゴー(Jonas Vingegaard)だと思われるが、ツールにおける戦略については、
“Obviously it depends on how good I am. But strategically speaking, it doesn’t hurt to start with two leaders,”
訳「もちろん自分の状況次第だけど、戦略という観点からいえば、ダブルエース体制もいいと思う」
“I think Jonas and I can also work well together. We have similar qualities in the mountains. It is always good for us to have two riders at the top of the rankings.”
訳「ヨナス・ヴィンゲゴーと自分は上手く協調できると思う。山岳でもは同じような力あるしね。総合上位に2名が揃うのはチームにとって絶対良い状況だろうしね」
このように話し、今年のツール・ド・フランスではダブルエースとして自分も総合優勝を狙う可能性を示唆する。もしこの通りになれば、これまではツールで純粋なアシストとして働いてきた彼が今年のツールでは全く異なる役割で走ることになる。
もちろんヴィンゲゴーに何かあればクスが単独エースとなる。3週間の長いレースでは何が起こるかわからないので備えは必要。ヴィンゲゴーが大きく崩れるというのは考えにくいが、怖いのは落車とメカトラ。
加えて今年のツールが昨年までと決定的に違う点がある。それはライバルチームとしてプリモシュ・ログリッチ(Primož Roglič)をエースにボーラ・ハンスグローエが新たに参戦してくることだ。昨年まではポガチャルvsヴィンゲゴーの2人だけが別次元の争いを繰り広げていたわけだが、今年はそこにログリッチが加わり三者鼎立の様相となること必至。レース展開はより複雑なものとなるだろう。
他にもレムコ・エヴェネプール(Remco Evenepoel)のツールデビューもあるが、チーム力と本人のツールでの経験のなさを考えると、最終的には総合優勝争いにからむ可能性は少ないか?
このようにこれまでとは異なる戦いとなる可能性があるだけにダブルエース体制で臨むのも戦略的には当然という考えもできる。