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ツール・ド・フランスでなぜ軽量クライミングバイクが使われないのか?Bahrain Victoriousも新型Bianchi SPECIALISSIMAはほぼ使われず
情報源:No One Wants to Race on a Climbing Bike at the Tour de France
かつてプロロードレースでは、山岳ステージになると軽量なクライミングバイクへ乗り換えることが当たり前だった。しかし近年のツール・ド・フランスでは、その常識が大きく変わりつつある。
2026年大会でも総合優勝を争う有力選手の多くが、超軽量モデルではなくエアロロードを山岳ステージでも選択しているという現実がある。
もちろんその筆頭はタデイ・ポガチャル。もうずっとColango Y1Rsだ。それは決してColnagoの軽量バイクという部類ではないし、クライミングバイクではない。
しかしそれに乗ってポガチャル(ポガチャルだから?)はグランツールもワンデイレースも勝ちまくっている。
ツール・ド・フランス前にBianchiから新型SPECIALISSIMAが発表された。このバイクは超軽量バイクというほどではないし、そうしたPRはなされていないが、それでも現行のエアロロードバイクOltre RCよりは軽い。
新型SPECIALISSIMAはフレームサイズ55だと最上位モデルで750g、一方で現行Oltre RCは同じフレームサイズで915gとされている。
機材にこだわるプロからすればこの160g弱の差は大きな差だろう。しかしそれでもBianchiをチームバイクとして使うBahrain Victoriousはほぼ新型SPECIALISSIMAを使っていない。
このインスタ画像は先日の2026ツール・ド・フランス第6ステージのピレネー山脈が舞台となった山岳ステージのものだが、チームの総合エースであるレニー・マルティネスもより軽量な新型SPECIALISSIMAではなく、現行Oltre RCを使っている。
同チームで新型SPECIALISSIMAを使うのはダミアーノ・カルーゾぐらいだ(ひょっとしたら今後増える可能性はあるが)。次のインスタ投稿がダミアーノ・カルーゾの新型SPECIALISSIMAだ。フォークの模様のあるなしでOltre RCと異なっているのでわかりやすい。
それではなぜ近年のプロはグランツールといった厳しい山岳ステージのあるレースでも軽量なクライミングバイクを使わないことが多いのか?
その理由は結局のところ、UCIルールがあるからだ。
これまでもロードバイクの性能を左右する要素として、「軽さ」と「空力性能」のどちらがより重要なのか議論されてきた。
以前は山岳では数百グラム軽いクライミングバイクが有利と考えられていた。しかし近年はフレーム設計やカーボン技術の進化によって、エアロロードもUCIの最低重量である6.8kg付近まで軽量化されている。
その結果、クライミングバイクとの重量差は非常に小さくなった一方で、エアロロードが持つ空気抵抗の低減効果は依然として大きい。
登坂中であっても速度が20km/hを超える場面では空気抵抗の影響は無視できず、総合的にはエアロ性能によるタイム短縮効果が重量差によるメリットを上回るケースが増えている。
つまるところ、UCIルールの重量下限規定のせいで、クライミングバイクがそれに抵触しないように多少軽量化したぐらいではエアロロードバイクのエアロ効果を上回るだけのメリットが得られないのだ。
これがもしUCIルールのその規定が緩和され、たとえば重量下限は4.8kgとかになれば世界は一変することになるだろう。クライミングバイク全盛期が訪れるかもしれない。
しかし現行のUCIルールの下ではエアロロードバイク、しかもSpecialized SL9に代表されるような万能型エアロロードバイク(オールラウンドエアロロードバイク:略してAAR?)が隆盛を誇るのも当然だ。
山岳ステージであっても、純粋な登坂区間だけではなく平坦区間や高速ダウンヒルが含まれることが多い。そのためレース全体で見れば、エアロロードの方が有利になるケースが少なくない。
またチームが万能型エアロロードバイクを中心にするのは次のような考慮要素もあるだろうか。
また、現在のところ主要バイクメーカーも多くのメーカーにおいては、「エアロバイク」と「クライミングバイク」を完全に分けるのではなく、両者の性能を高いレベルで融合したオールラウンドモデルの開発が中心になっていると思われる。
会社としての儲けでいえば、用途ごとに複数台買わせるほうがお得ではあるだろうが、そんなのは自転車オタクを相手にするときだけであり、市場拡大のために重要な初心者というターゲット層を相手にするならば「1台で何でもいけます。レースでもロングライドでも快適で速いです」とPRするほうが売れるだろう。
このような流れは今後さらに加速すると考えられる。結果としてクライミングバイクの存在意義はますます小さくなっていくのではないだろうか。そうするとメーカー側も積極的に開発する動機が薄れることだろう。
一方で、この傾向がそのまま一般ライダーに当てはまるとは限らない。
プロ選手は平均速度が非常に高く、空力性能による恩恵を最大限受けられる。しかし結局はスポンサーの考え・都合で使える機材は限定される。
一方でUCIレースに関係のないホビーユーザーでは、UCIの下限規定なんてどうでもよく、巡航速度も低く、長距離の下りを毎日走るなどもない。ポタリングガチ勢ほど軽量性、快適性、ハンドリングの好みなどに応じて個人の自由で好きなようにバイクを選べば良い。もちろん見た目こそが一番重要だ。
また日本で大人気のUCIとは関係のないヒルクライムイベントを主な目的とするなら、超軽量バイクを使うほうが合理的だ。
近年のプロのロードレース界ではエアロロードの進化によってクライミングバイクの存在感が以前ほど大きくなくなってきた。
軽量化技術の進歩によって重量差が縮まり、空力性能によるアドバンテージがレース全体ではより大きな意味を持つようになったからだ。
もちろんヒルクライム専用バイクが完全になくなるわけではないだろうが、プロロードレースの最前線では「一台であらゆるコースを速く走れる万能型ロードバイク」が新たなスタンダードとなりつつのが現実だ。