なぜMathieu van der Poelが突然失速したのか？本人コメント。2019世界選、残り12ｋｍ。

1日中強風と雨そして低温が選手全員を苦しめ、地獄のクラシックレースさながらのサバイバルレースになってしまった昨夜の世界選手権メンズエリートロードレース。

その悪天候が全チームの全選手の全てを狂わせたといっても過言ではない。参加チームの関係者も視聴者も誰もが「まさかこうなるとは…」という感想だったと思う。

オランダの思惑通りだったかのように思えた…

そんな日、優勝候補最右翼だった一人がオランダのバケモノMathieu van der Poel（以下MVDP）。残り33キロあたりでメイン集団から果敢に飛び出し、Matteo Trentinなどをひきつれ先頭集団へジャンプした。

先頭に合流後も積極的にその集団を牽引し続け、誰もが消耗している中でも余裕がありそうに見えた。この段階では誰もが「おいおい、またMVDPが勝つのかよ」と思ったはず。オランダチームとしても盤石かどうかは知らんけど、ある程度の予想してた通りの展開になったはず。つまりオランダが勝つ流れが見えていた。

しかし、みんなが覚えてるように最後の周回に魔物が彼を襲った。残り十数キロで突然の失速。

Mathieu van der Poelに何が？本人コメント

MVDP本人はレース後のインタビューでそのときの状況についてこう述べる。

“I felt pretty good. But then all of a sudden, the tank was empty,”

From Cycling Weekly, “Mathieu van der Poel left ‘dizzy and empty’ in punishing Yorkshire Worlds race”

訳「レース中はかなり調子はよかった。でもあのとき全くの突然、体力が空になってもうた」

“I’m quite okay now actually. That’s a strange thing. The first 20 minutes after that I had to let the group go I was really dizzy and empty. But then the last four or five kilometres I was good again. So it was kind of strange.”

From Cycling Weekly, “Mathieu van der Poel left ‘dizzy and empty’ in punishing Yorkshire Worlds race”

訳「（レース後の）今はなんともないんやけどね。ほんま不思議やわ。メイン集団から飛び出した20分後に、マジでめまいがしてて体が動かんようになった。でも、それから残り4ｋｍか5ｋｍになったらまた体が元に戻ったんよ。ちょっとした不思議やわ」

“It’s not happened to me in the past but it’s also the first time I’ve raced this distance in the rain.”

From Cycling Weekly, “Mathieu van der Poel left ‘dizzy and empty’ in punishing Yorkshire Worlds race”

訳「こんなこと初めてや。同時に雨の中こんな長距離走ったのも初めてやった」

というわけで、調子はかなり良かったもよう。しかし、レースの解説者からよく聞くことやけど、調子が良いがゆえに逆に体が動きすぎて無駄にエネルギーをつかってしまい、最後の勝負どころでエネルギーがなくなることもプロですらあるらしい。

調子が悪かったら前半から抑えめに走るからそれが好結果になることもある。調子がよければいいというものではない。それがレースであり人間。難しい。

調子が良いときも悪いときも、結局のところ戦略的にスマートに走らなければならないのは同じということか。

MVDPも長距離レースに向けた対策と練習は当然つんできたはず。しかし、調子が良かったことに加えて、昨日のような悪天候の中での長距離レースは初めてだったという経験不足が失速につながったのやろね。

ただ今回の経験は確実にMVDPをさらに進化させるはず。