マルセル・キッテルが語る引退の背景・理由とプロチームへ求めること
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昨年の8月に突然の現役引退を発表した当時の最強スプリンター、マルセル・キッテル(Marcel Kittel)。これまでも引退決断の背景について少しずつメディアに語ってきたが、今回また少し踏み込んだ感じの発言をしている。
情報源:Marcel Kittel: ‘There’s no shame in change’
引退の理由・背景
今回の情報源記事でキッテルが述べていることは多いが、いくつかの要点をかいつまんで書くと、次のようになる。
- ①毎年毎年レースだらけで同じことの繰り返し。それが嫌になった
- ②ロードレースの特異性。ただひたすら心身ともに疲労が蓄積されるだけのスポーツ。心身を回復させる時間のなさへの不満
- ③選手を人間として扱わないチームや人間がいることへの不満
新鮮味のない退屈な日々
上①「①毎年毎年レースだらけで同じことの繰り返し。それが嫌になった」という点については次のように述べている。
“It got to the point in 2019 where I realised everything was just repeating… [Nothing was] really new to me or challenging or what I wanted to do. I couldn’t reinvent experiences for myself.”
訳「2019年が節目になったね。その年に気づいてしまったんや、結局同じことの繰り返してるだけやなって。繰り返しの日々に新鮮な感動や、新しい挑戦、自分がやりことなんて何もなかった。そんな毎日に、自分ではそれまでとは違うやり方で新しく何かを始めるのは無理やったんよ」
ロードレースというスポーツの特殊性
次に②ロードレースの特異性。ただひたすら心身ともに疲労が蓄積されるだけのスポーツ。心身を回復させる時間のなさへの不満」については、
”You train to get tired to become better for the next race in which the idea is that you will become tired later than the rest. And at the end of the race, the strongest one will be the one who is the least tired. There is no other sport like it”
訳「へとへとになるまでトレーニングして、次のレースでは今よりもっと強くなろうとするわけやけど、それは結局、休養すべき時間を削ってるだけでしかないわけ。だからレースが終わったとき、勝者はまさに最も疲労度が少ない選手となるわけよ。そんなん他のスポーツにはないで」
心身のストレスをしっかりとリセットするべき期間は絶対必要であるのに、どうしても勝ちたいがゆえに過剰なオーバートレーニングをしてしまう傾向にあること、それが結局選手の肉体や精神を蝕んでしまうと。キッテルはその警鐘を鳴らしていると思われる。この点については次の③とも関連する。
プロチームの考え方
“I needed a good group and the right atmosphere around me, and when I had that, I felt unbeatable. But I know from experience that other characters and teams have a different mindset.”
訳「自分は気の置けない仲間や良好な雰囲気をチームに望んでいたのよ。それがあれば自分は無敵だと感じられたからね。でも、自分の経験上、そういう自分の考えとは違う人間やチームがいるのも知っている」
これは暗にカチューシャ・アルペシン時代のことを言っているのであろう。キッテルがなかなか勝てなくなったあの時期である。
そしてキッテルは、ストレスや悩みを抱えている選手を肉体面でも精神面でも適切にサポートすること、レースをするロボットではなく一人の人間として選手を扱い配慮をすることが最も大切なチームの仕事であると述べる。最近は少しずつ各チームにそういった意識・ポリシーが芽生えつつあるが、まだまだ改善していかなければならないとも。