自転車業界が復活へ?英国では再び成長軌道に乗り始めているとの報告

Wiggle消滅後、英国の自転車店は復活へ?価格競争から「専門性・コミュニティ」重視へ

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世界がコロナ禍に別れを告げたときから、世界中の自転車業界はコロナ禍の活況(混乱?)の大きな反動を受けて、低迷・不況に苦しむこととなった。

積み上がる在庫と大きく落ち込んだ需要に苦しんだのは小さなショップだけではなく、自転車界の巨人のGiantやShimanoですら長期間苦しむハメになった。

現在ではそんな苦しみも減りつつあるようだが、それでもまだその残滓・残響がゼロになったわけではないだろう。

だがしかし、そんな低迷する自転車業界に、特に英国での自転車小売業界に回復の兆しが見え始めているようだ。

大手通販サイトWiggleが事実上姿を消した一方、実店舗とオンライン販売を組み合わせるショップや、フィッティング、整備、コミュニティづくりに力を入れる専門店が成長しているとの報告がある。

業界全体がコロナ禍後の混乱を完全に脱したとはいえない。だが、価格の安さだけを競うビジネスから、専門知識や対面サービスを価値として提供するモデルへ、市場の軸足が移りつつある。

これはいわば、ビジネスとして健全化が進んでいるのではないか(というか、商売の基本に立ち戻る)?

情報源:’People don’t join the cycle industry to get rich’ – Wiggle might be gone, but are bike shops finally bouncing back?

自転車通販の雄Wiggleの消滅と、英国の自転車業界の復活の兆候

かつてのWiggleは、チューブや工具、ウェアから完成車まで幅広く扱い、英国のサイクリストにとって「自転車用品版Amazon」ともいえる存在だった。

日本のロードバイクユーザーは🐷も含めて、円高の恩恵もあり日々Wiggleでのショッピングを楽しんでいたものだ。今となっては懐かしい。当時に複数枚まとめて購入したCraftのインナーウェアなど各種自転車用品は今でも普通に使っている。

そのWiggleは2023年に経営破綻し、その後Frasers Groupに買収された。さらに現在Wiggleのウェブサイトも消滅し、ブランドは同グループ傘下のEvans Cyclesに事実上統合されたとみられている。

Wiggleのような大規模なオンライン通販は「規模の経済」による(?)メリットを活かし、店舗運営費や調達コストなどを抑えながら大量の商品を値引き販売できた。

そのため規模の小さい独立系自転車店は価格面で対抗することが難しく、英国では長い歴史を持つ店舗を含め、多くのショップが閉店に追い込まれた。

しかし現在その巨人が姿を消したことで、残されたショップには新しい需要を取り込む機会が生まれているようだ。

ロンドンとイングランド南東部で12店舗を展開するBalfe’s BikesのCEOは、2026年の自転車業界について前向きな見方を示す。

英国Bicycle Associationのデータでは、2026年に入ってから売上が前月比で成長を続け、8月は売上高が特に大きい月の一つになったとのこと。

同CEOは、コロナ禍後の英国自転車業界が、ここ数年で最も健全な状態に近づいていると評価する。

また、Sigma Sportsも2025年に2021年以来初となる黒字を計上した。

英国の自転車小売市場全体が完全に立ち直ったと断定するのは早いものの、回復を示す材料は増えつつあるようだ。

実店舗と通販を統合するBalfe’s Bikes

Balfe’s Bikesは、Wiggle Chain Reactionの消滅によって生じた市場の空白を埋めるため、商品ラインアップを拡大した。現在、同社のウェブサイトには約7万点の有効なSKUがあり、今後も品ぞろえを増やす方針だ。

注目されるのは、オンラインと実店舗で同じ価格を提示する「単一価格」の戦略である。

顧客は通販の利便性を利用できる一方、店舗ではスタッフへの相談や商品確認、フィッティングなどのサービスを受けられる。オンラインと実店舗を競合させるのではなく、両者を一体化させることで顧客との接点を広げている。

これはマーケティングにおけるオムニチャネル戦略(様々な販売経路をシームレスに統合・一体化させ、顧客の購買体験をより向上させようとするもの)の1つだと考えられるだろうか。

値引き競争に参加しないPronto Bikes

一方で、このBalfe’s Bikesとは異なる戦略を取って成長する店もある。

サマセット州フルームのPronto Bikesはオンライン市場での値引き競争を避け、実店舗でのサービスに集中する方針を選んだ。

同店のジャスティン・ホイ代表は、大手オンラインショップとの価格競争は「多くの仕事に対して得られる利益が小さい」と指摘する。販売量が増えても、値下げによって利益率が低下すれば、事業として持続できないからだ。

Pronto Bikesは成長を続けており、2026年末までにリングウッドへ2号店を開設する計画を進めている。

ただし、その一方ではPrimeraやPlanet Xなどの事業が姿を消しており、英国の自転車市場には依然として厳しい面も残る。

自転車店を支える「コミュニティ」という価値

Pronto Bikesの強みは、商品を販売するだけでなくサイクリストが集まる場所をつくっていることにある。

同店はコロナ禍にフルームで開業し、店舗を拠点とするPronto CCを設立した。最初のグループライドには30人が集まり、3週間後には参加者が85人に増加。クリスマスパーティーには約150人が参加する規模へ成長した。

店内にはカフェもあり、ライドの途中で休憩したり、仲間と待ち合わせたりできる。こうした活動が来店する理由を生み、ショップの売上にもつながっている。

オンライン通販が「商品と価格」を中心に競争するのに対し、実店舗は「人とのつながり」や「体験」を提供できる。この違いが、地域密着型の自転車店にとって重要な武器となっている。

フィッティングと専門知識は通販で代替できない

Pronto BikesではPinarelloの販売も好調のようだ。

Pinarelloは完成車のオンライン発送を認めていないため、購入者は店舗を訪れ、バイクフィッティングを受けたうえで車体を受け取る。

実車を確認し、自分の体格に合わせてもらい、専門スタッフから説明を受けて納車される。その一連の体験自体が商品の価値になる。ただ単に配送された箱を開けるだけで終わるという体験を超えるものだ。

またシューズの販売でも、同店は数多くの種類と相当の在庫をそろえ、スタッフが顧客の足を確認し、形状やサイズに適した商品を提案する。経験豊富なバイクフィッターも店舗を拠点に活動しており、オンライン通販にはない専門性とリッチな購入体験を提供しているわけだ。

英国の自転車店は本当に復活したのか

こうした成長しつつあるショップの事例があるのは事実だが、だからといって英国の自転車店が全面的な回復期に入ったと判断するには早計だ。

Wiggleだけでなく、独立系ショップや有力小売業者の閉店もまだ続いており、利益率の低さや過度な在庫、値引き競争といった問題が解決したわけではないからだ。

それでも2026年の売上成長や一部企業の黒字化は、業界が最悪の状況を脱しつつある可能性を示しているのではないか。

今後の厳しい自転車ビジネスを生き残るのは、オンライン販売の利便性を生かしながら、整備、フィッティング、専門知識、コミュニティといった実店舗ならではの価値をトータルに、総合的に提供できるショップなのかもしれない。

なお来年の2027ツール・ド・フランスはウェールズ、スコットランド、イングランドを舞台にスタートする。この熱狂が再びイギリスでの自転車熱に火をつけ、英国での自転車ビジネス復活が加速する可能性がある。業界としてもかなり力を入れたいところだろう。

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