シマノは売れるが稼げない状態。売上高が5%増も営業利益は28%減。2025年1〜9月期の連結決算発表

シマノが2025年1〜9月期の連結決算を発表した。その内容を大雑把にまとめると、売上微増も営業利益は約3割減というものだった。

シマノ公式：2025年1〜9月期の連結決算PDF（PDF直リン）

売れているが利益はない

シマノは、2025年9月末までの第3四半期および9 か月累計において、売上高には一定の増加が見られたものの、営業利益および当期純利益で大幅な落ち込みを記録した。

数字的には売上高は4.8%増の3510億円、営業利益は27.8%減の365億円となる。一言でまとめると売れているが稼げない状況ということか。

シマノ決算報告書では次のように自転車部門について状況が記載されている。

欧州市場では、安定した天候を背景に完成車の店頭販売が堅調だったものの、市場在庫
はやや高めの水準で推移しました。

北米市場では、経済の先行き不透明感から完成車の店頭販売は弱含みで推移したものの、市場在庫は適正水準を維持しました。

アジア・中南米・オセアニア市場においては、消費者マインドの冷え込みから完成車の店頭販売はやや低調に推移したものの、市場在庫は概ね適正水準まで改善しました。一方で、スポーツサイクリングの店頭販売に勢いを欠いた中国市場の市場在庫は高い水準で推移しました。

日本市場においては、完成車の価格高騰が影響し店頭販売は低調だったものの、市場在庫は適正水準で推移しました。

背景にある複数の構造的要因

在庫調整の継続

コロナ禍からの需要爆発とその反動で、多くの自転車関連部品企業が在庫を抱えていた。シマノでも「主要顧客が在庫調整を2025年末までに終える見込み」とされており、これが利益を圧迫している。

ユーザー目線では、売れ筋である「12速」・「電子変速」化が一段落し、入れ替え需要が落ち着きつつあるか。

製造稼働率の低下・為替の影響

報道によれば、製造稼働率の低下が生産コストを押し上げたようだ。特に、部品供給や海外生産環境における遅延・効率低下が影響しているとも。さらに、為替変動や販管費が利益を圧迫。特に円安・原材料価格の上昇は日本企業にとって逆風といえる。

売上構成の変化と利益率低下

売上そのものは微増であるが、その増加の質がポイントだ。廉価モデル・量販市場の拡大によって、利益率の高いハイエンド部品の伸びが限られている可能性がある。

ロードレース用途における高級版コンポーネント需要が伸び悩むと、高利益率モデルが相対的に減少し、収益構造が弱る。こうした構造変化が「売上増＋利益減」という現象につながっていると分析される。

今後のあり得る動き

高級（上級）モデルの価格改定・流通調整

利益が落ちているということは、メーカーがコスト削減や在庫調整を急ぐ可能性が高い。

ハイエンドコンポ（例えば「XTR/デュラエース」）の生産・流通が絞られると、希少性が高まり「在庫高＋値上げ」あるいは「待ち時間長期化」という状況が起き得る。

また先日の記事「【動画】なぜシマノDi2のリアディレイラーがすぐ壊れてしまうのか？そのユーザー側の原因と対策」で紹介した動画で語られているように、1世代前の11速モデルの在庫をシマノが急ピッチで消滅させようとする可能性もある。

中・下位モデルへの注力とパフォーマンス観点

収益構造が据え置き型に変化しているならば、メーカーは中価格帯モデルで数量を稼ぐ戦略にシフトすることも考えられる。これは、「ハイエンドでの性能最適化のペース鈍化」や「ロー～ミドルレンジのコストパフォーマンス改善」に注力するという展開につながる可能性も？

復活の困難さ

2025年末までに在庫調整が完了するとシマノ自身が説明しており、これが実現すれば2026年以降には利益回復の兆しも期待されるものの、競争激化・技術革新停滞・コスト上昇の三重苦が並行して存在するため、回復のスピード・規模とも確実とは言い切れないか。