アクセル・ローランスが語るイネオスの変化。「イネオスはもはや総合成績だけに注力しているわけではない」

グランツール、特にツール・ド・フランスで圧倒的な支配力を見せつけていたかつての最強チーム、INEOS Grenadiers（前チームSky）。しかしくその大エースだったクリス・フルームの大怪我と移籍、タデイ・ポガチャルやヨナス・ヴィンゲゴーという化け物たちの台頭により、グランツールなど大きなステージレースでは総合優勝を狙うことが事実上不可能になっていた。

そんな中、昨年までAlpecin-Deceuninckで走り今年からINEOS Grenadiersで走るアクセル・ローランスが、INEOS Grenadiersの戦略の変化について語る。

情報源：Axel Laurance on the switch in mentality of INEOS Grenadiers: “It took some getting used to for everyone to not focus on GC anymore”

彼は今年のイネオスに起こった変化について、

 “Everyone in the team said: we have to win more again. No longer just focusing on the GC, that is the most important difference.”

訳「今年のチームのテーマは、『再び勝利を量産しなければない。もはや総合成績だけにフォーカスをあてることはない。それがこれまでと違う最も重要な変化だ』というものだ」

と話す。

上述のように大きなステージレースでの総合優勝が現実的には不可能になっている今、そのようなステージレースの総合優勝だけに焦点を当てていてはジリ貧になるだけである。そこで今年のイネオスは、どんなレースでも積極的にしかけて主導権を握り、最後まで勝利を狙い続けるようにしている。

またアクセル・ローランスは続けて、

From the start of the season we rode to win and that took some getting used to for many. That focus on the GC was so ingrained, that everyone had to switch in the winter

訳「今シーズンは最初のレースからガチで勝利を狙っていった。チームメイトの多くはそのチームの方針に慣れるのにちょっと時間かかってたけどね。これまでずっと総合成績だけを狙うのに慣れきってたからね。だからその方針にあわせてみんなシーズンオフにこれまでのやり方や考え方を変えるのを余儀なくされた」

このように、昨冬のシーズンオフの過ごし方、トレーニングのやり方、目標の建て方など様々な面で変化があったことを示唆する。

かつてはグランツール総合優勝に注力する選手というのはシーズンインから全力で走るなんてことはなく、じっくりと体を作っていったものだ。だから基本的にクラシックで活躍するチームと、グランツールで総合成績を争うチームはある程度は明確に分かれていた。クイックステップやモビスターはまさにその代表例。

だが近年ではタデイ・ポガチャルのUAE、ヴィンゲゴーやワウト・ファン・アールトのTeam Visma | Lease a Bikeといった二強はグランツールでもクラシックでも積極的に勝利を狙うようになっていて、シーズン通じて常勝を目標としている。ロードレースの世界は大きくその常識が変わったと言わざるを得ない。

そして上で述べたようにINEOS Grenadiersはグランツール総合優勝が事実上ほぼ絶望的である以上、それ以外のレースで勝たなければチームの価値が低下する一方である。年間を通じてあらゆるレースで勝利を狙わなければならない。そこでシーズンイン直後から勝利を狙える体作りをしなければならず、これまでのシーズンオフと比べると大きな変化があったのだろう。