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ポガチャル欠場でスロベニアの世界選手権戦術が一変。ログリッチ、オムルゼルらは逃げで勝機を探る
さきほどの記事でタデイ・ポガチャルが室内トレーニングに復帰したと伝えたが、2026年UCIロード世界選手権でスロベニア代表はタデイ・ポガチャルを欠くことになり戦術変更を迫られている。
ポガチャルという絶対的エースのために集団をコントロールする従来の戦い方はもはや使えない。
そこでプリモシュ・ログリッチ、ヤコブ・オムルゼル、マテイ・モホリッチ、ヤン・トラトニクらが逃げや終盤の攻撃に加わりながら勝機を探る展開になりそうだ。
この世界選手権でのスロベニア代表チーム(男子エリートロードレース)については先日書いた次の記事で確認してほしい。
→過去記事:イタリア、オーストラリア、スロベニアの世界選出場選手
UAE Team Emirates-XRGでポガチャルのチームメイトを務めるドメン・ノヴァクは、世界選手権におけるスロベニアの戦術が「大きく変わる」と説明する。
ポガチャルが出場する場合、スロベニアは優勝候補を擁する強豪国としてレースを組み立てる。アシスト選手は序盤から集団前方に立ち、危険な逃げとのタイム差を管理しながら、エースが攻撃する局面までレースをコントロールするわけだ。
ノヴァクは2020年以降、毎年世界選手権に出場。主にレース序盤から150~200km地点まで牽引し、ポガチャルのために集団を管理する役割を担ってきた。
しかし今回は守るべき絶対的なエースがいない。スロベニアには一日中メイン集団を牽引する必要がないわけだが、そのかわり各選手が展開に応じて動く、より各選手個人の判断力と自由度の高い戦術が求められる。
この戦略の変更の影響を最も直接的に受けた選手の一人がノヴァクだ。上の過去記事「イタリア、オーストラリア、スロベニアの世界選出場選手」で確認してもらえばわかるように、ドメン・ノヴァクの名前は出場選手リストにない。
ポガチャルがいなければこれまで担ってきた長距離の集団牽引という仕事は必要なくなる。その一方で、これまで強豪国の集団コントロール役として知られてきたノヴァクが逃げへ入ろうとしても、他国が自由に行かせるとは限らない。
自身の役割が明確でないこともありノヴァクは世界選手権には出場せず、9月22~27日に開催されるクロ・レースへ向かうことを選択したようだ。
ノヴァクは、スロベニア代表は序盤から積極的にレースを動かすのではなく、まず展開を見極める必要があると主張する。
序盤のアタック合戦が落ち着き、登りや距離によって選手が脱落し始めた段階で、ログリッチ、モホリッチ、オムルゼル、トラトニクらが有力な動きに加わることが理想になるだろうと。
つまり、スロベニアの基本戦略は次のように変化する。
| ポガチャル出場時 | ポガチャル欠場時 |
|---|---|
| 絶対的エースを中心に統率 | 複数選手に勝負の自由を与える |
| 集団を長時間コントロール | 他国に集団牽引を任せる |
| ポガチャルの決定的な攻撃を準備 | 逃げやカウンターアタックを狙う |
| アシストの役割が明確 | 展開に応じて役割を変更 |
| 優勝候補としてレースを背負う | マークの薄さを利用して勝機を探る |
優勝候補としてレースを支配する戦術から、展開の隙を突く戦術への転換といえる。
ポガチャル不在のスロベニア代表では、実績から考えればログリッチが中心選手となる。
ログリッチの世界選手権ロードレースにおける最高成績は2020年の6位。2025年大会では11位だった。起伏の多いワンデーレースへの適性を持つため、モントリオールのコースでも上位へ入る可能性はある。
だが今回ログリッチ自身は明確な目標や戦術を示していない。ブエルタ・ア・エスパーニャ後、レース強度に耐えられるコンディション作りができたとして世界選手権への出場を決めたと説明しつつも、「優勝候補ではない」と慎重な姿勢だ。まずはベストを尽くし、その結果としてどの順位を狙えるのかを判断するという考えだ。
これは、ログリッチをポガチャルの代役として単独エースに据えるというより、複数ある選択肢の一人として使うという作戦を意味するだろう。
注目を集めるもう一人の選手がヤコブ・オムルゼルだ。
オムルゼルはこの2026ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージで優勝し、総合7位、そして新人賞2位に入った。初めて出場したグランツールで区間優勝と総合トップ10を同時に達成したことは、将来性の高さを示す結果となった。
2024ジュニア・パリ〜ルーベや2025ジロ・ネクスト・ジェンでも優勝経験があり、若手時代から高い評価を受けてきた。ドメン・ノヴァクは、オムルゼルについて逃げに入る判断がとても賢い選手だと評価する。
ブエルタでも2度の逃げに加わり、ステージ優勝だけでなく総合順位を大きく上昇させた。世界選手権でも有力選手へのマークが集中する展開になれば、オムルゼルのレース判断と逃げの能力が生きる可能性がある。
経験豊富なヤン・トラトニクも、スロベニアが勝負に使える選手だ。
ポガチャルが初めて世界王者となった2024年大会ではその決定的な攻撃を支える重要な役割を果たした。
今回はポガチャルを支えるのではなく、自らの成績を狙える立場になる。少人数の先頭グループが形成された場合や、有力選手同士が互いを警戒する局面では、トラトニクの終盤の攻撃が有効な武器となる。
ポガチャルの欠場によって、スロベニアは世界選手権の最有力国から、第2、第3集団の候補国へと立場を変えることになった。
戦力低下は避けられないが、その一方で、集団をコントロールする責任からは解放される。ベルギー、フランス、オランダなどが有力選手のためにレースを作る間、スロベニアは脚を温存し、重要な逃げや終盤の攻撃に選手を送り込めるわけだ。
ログリッチやトラトニクといったベテランの経験と知恵、モホリッチの攻撃力、オムルゼルの勢いなどを組み合わせられれば自由度の高い戦い方も十分に実行可能だろう。
ポガチャル不在のスロベニアはレースを支配する側ではなく、他国の動きから生まれる機会を利用する側になる。序盤はレース展開を様子見して体力温存。スロベニアの勝負は中盤以降からの活発化する動きをどのように上手く利用できるかにかかっていることになるだろうか。