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UCIが2029年のプロロード改革案を提示。グランツール16日化、少人数チーム、放映権共同化を検討
先日、世界選手権開催中のカナダはモンレアルでUCIの会合が行われ、2027年から導入される様々な新ルールやシステムが可決され明らかになった。
それについてはこのブログでも記事「UCIがルールを大きく改定へ。GPS追跡システムや遺伝子検査の導入、新ポイント制度など導入も、特別ジャージ新設はプロチーム反対で延期へ」で伝えた通りだ。
だが今回、最新の報告書でUCIはさらに改革を推し進めるべく、2029年からはグランツールを16日制にしたいなど大胆な改革案を提案している。その提案は、プロロードレースの将来像をまとめた約40ページの報告書「Future of Cycling」で明らかになった。
その内容には、グランツールを3回の週末に収める約16日間の形式、レースに出場するチーム人数の削減、放映権や商業権の共同販売、予算上限制度、移籍期間の導入などが含まれる。
ただし、これらは現時点で決定済みの新ルールではない。UCIは関係者との協議を続け、実現可能性の高い改革案を2026年12月のワールドツアー・セミナーで提示し、早ければ2029年シーズンから導入する方針だ。
UCIは2026年2月、男子・女子プロロードレースの組織モデルを見直すため、競技関係者を対象とした意見募集を開始していた。
寄せられた55件の提案には、男女チーム、選手と選手団体、各国連盟、レース主催者、自転車メーカー、放送事業者、スポンサーなど幅広い立場からの意見が含まれている。
今回のUCIの報告書では改革の課題を次の5分野に整理している。
最も多く合意が得られたのは安全対策だ。
一方、予算制限の方式や放映権をどこまで集約するかについては関係者の意見が一致していないようだ。
注目を集めたのが、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャというグランツールの開催期間を短縮する構想だ。
UCIは、3回の週末を含む短縮型グランツールについて実現可能性を検討するとしている。情報源メディアは現在の約3週間から約16日間へ圧縮する方向だと解釈しているようだ。
仮にそれが実現された場合は次のような効果が期待されるだろう。
また通常のステージレースについても、水曜日に開幕して日曜日に終了する5日間形式などが候補に挙げられた。
ただしこのような短縮案にはすべての関係者が賛成しているわけではない。歴史的レースの伝統や商業価値にも影響するため、UCIは法的問題を含む詳細な検証が必要だとしている。
またこれまでの議論にあがっていたネタだが、レースごとのチーム人数を減らし、男子・女子大会で標準化する案も検討される。
報告書で示されたのはチームに所属できる選手総数の削減ではなく、各レースへ出場する人数を少なくするという構想だ。具体的な人数はまだ決まっていないもよう。
UCIは少人数化によって、プロトンの規模を抑えられるだけでなく以下の効果が期待できると考えているようだ。
もっとも、人数を減らすだけで落車が減るのか、選手一人あたりの負担が増えないかなど、実際の影響を慎重に検証する必要があると考えられる。
プロロードレースビジネスの大きな課題はチームの収入がタイトルスポンサーに大きく依存していることだ。報告書によると、多くのチームでは主要スポンサーと副スポンサーが予算の90%以上を支えている。
そこで提案されたのが、複数レースの放映権、スポンサー権、データなどをひとつの商業パッケージにまとめる「公式グローバルサーキット」の構想だ。
個々の主催者が別々に権利を販売する現在の仕組みを部分的に集約できれば、放送局や世界規模のスポンサーに対する交渉力を高められる可能性がある。
新たな収入源としては次のようなものも挙げられているもよう。
これに加えて、生み出された収入をチーム、主催者、UCI、下部カテゴリー、育成活動へ分配する仕組みも提案されている。
もっとも、ツール・ド・フランスなどを保有する既存の主催者に、放映権や収益の提供を強制する方針ではない。
UCIは既存主催者の商業権を認め、権利の共同化については任意参加と共同運営を原則とする。新たに最高カテゴリーへ加わる大会については、共同販売への参加を登録条件とする可能性がある。
つまり、既存の放映権収入をチームへ一方的に再分配するのではなく、デジタルコンテンツやデータなどの新しい権利を開発し、プロロード全体の市場を拡大する考え方だ。
チーム間の経済格差を抑えるため、予算上限、年俸上限、ポイント上限といった「財政的公平性」の仕組みも検討されている。
チームの資金力による戦力差が広がれば、同じチームがレースを支配し、競技の予測可能性が高まるとの懸念が背景にある。
選手移籍については、サッカーに近い制度として以下の案が示された。
一方、チームが固定的なライセンスを保有するフランチャイズ型の閉鎖リーグについて、UCIは採用しない立場を示した。最高カテゴリーへの参入は、今後も競技成績などの客観的基準に基づくとしている。
ファン層の拡大に向けては、映像制作とデジタルサービスの刷新が提案された。
具体的には、車載カメラ、ドローン撮影、GPS位置情報、選手の走行データ、チーム無線、AIによる自動ハイライト、ゲーム風グラフィックなどが候補となっている。
選手にシーズンを通じた固定番号を割り当て、グッズ販売や個人ブランドの構築に活用する案もある。複雑なカテゴリー名やランキング制度を簡素化し、ロードレースを初めて見る人にも理解しやすくすることが狙いだ。
今回の報告書に記載されているからといって、2029年から16日間のグランツールや少人数チームが必ず導入されると決定しているわけではない。あくまで構想レベルのものだ。UCIは今後、各案の法的、競技的、商業的な実現可能性を検討していくことになる。
その最初の方向性は、2026年12月9日・10日にスペイン・ベニドルムで開催されるセミナーで関係者に示される予定だ。
プロロードレースは、長い歴史と伝統を維持しながら経済的な不安定さ、安全問題、複雑なレースカレンダー、デジタル時代への対応を同時に迫られている。2029年に向けた議論は、グランツールの姿だけでなく、プロロードの収益構造そのものを変える可能性を秘めている。
先月の記事「打倒UCI?プロレース改革プロジェクト「CCG」とは?目指す改革の内容は?」で伝えたようにPinarello-Q36.5 Pro Cycling Teamのオーナーの大富豪が中心となりUCIとは独立してロードレースビジネス改革をしていこうという動きがある。
今回の報告書に見られるUCIによる改革の姿勢は、こうした改革プロジェクトに対抗し、UCIの力や権益を維持しようとする動きの現れとも考えられるかもしれない。