Schwalbe「現状のフックレスホイール耐久基準は不十分」。今後のロードバイクのホイールとタイヤはどう進化するのか?

今後のロードバイクのホイールとタイヤの進化について。主要6ブランドが語るワイド化・新素材・フックレスの未来

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かつてのロードバイク用製品は、ホイールはホイール、タイヤはタイヤ、ハンドルはハンドルといった個別のパーツごとに何g軽量されたとか、何ワット速くなったとアピールされてきた。

しかし今のロードバイク業界は、乗り手も含めたトータルでの性能(バイクシステム全体の最適化)を重視する方向へ舵を切っている。そして、ホイールとタイヤの次世代技術もまた単純な軽量化や空気抵抗の削減から、タイヤを含むシステム全体の最適化へ移行している。

今回は、そんなロードバイクのホイールとタイヤの現状と今後の方向性について、DT Swiss、ENVE、Zipp、CADEX、Scope、Schwalbeといった主要メーカーへの取材した記事をご紹介。

その取材から見えてきた共通項は、ワイドタイヤ、低圧化、カーボンスポーク、新素材、製造技術の高度化だ。

しかし一方で、フックレスリムについては、各社の立場が大きく分かれていることがわかった。

情報源:Schwalbe says hookless safety standards need tightening, while Cadex argues tyre beads are the real issue – we speak to the brands shaping the future of wheel and tyre technology

最新ホイールの速さ・性能とは?

ハイエンドホイール同士の空力性能差は、現在では数ワット程度に縮まっている。そのため、今後は重量や空気抵抗だけでなく、横風での安定性、快適性、反応性、耐久性、タイヤとの相性が製品を差別化する重要な要素になると思われる。

特に重視されているのが、ホイールを単独の部品として設計するのではなく、タイヤ、空気圧、リム幅、スポーク、ハブを含むひとつのシステムとして開発する考え方だ。

DT Swissは、リムだけでなくハブ、スポーク、ニップルまで主要部品を自社開発している。そして設計の出発点をタイヤに置き、ContinentalやSchwalbeと密に協力しながら将来のタイヤサイズや使用条件を予測。その後、Swiss Sideの協力を得て最適化を行い、それからリム形状を決定するという流れで開発をしているとのこと。

同社は、わずかな空力性能を追求するより、横風でも予測しやすい挙動を示し、ライダーがエアロポジションを長く維持できることのほうが重要な場合もあると考えている。DT SWISSは、エアロ性能だけが決定的に重要であるとは考えない。

なおDT SWISSが他社のためのOEM製造の割合は60%ぐらいらしい。

ロードタイヤは28~30mmが最適解になるのか

ロードバイク用タイヤは長年にわたってワイド化してきたが、際限なく太くなるわけではなさそうだ。

Zippは、路面から受ける振動によるエネルギー損失まで考慮するとロードでは28~30mm付近が最適になると予測する。グラベルでは50mm前後が有力とみている。

一方、CADEXがプロチームから受けた要望には32mmや34mmも含まれており、レース現場ではさらに太いタイヤへの関心も高い。

Schwalbeの試験でも、荒れた路面ではタイヤ容量を50mm付近まで増やすことで、ハンドリングと転がり抵抗が改善する場合があるという。

今後は「細いほど速い」という従来の常識ではなく、路面状況、リム幅、空気圧を組み合わせて最速のタイヤ幅を選ぶ考え方が主流になりそうだ。

フックレスリムをめぐりメーカーの判断は分裂

次世代ホイールを考えるうえで、最も意見が分かれているのがフックレスリムだ。

DT SwissとScopeはロードでフック付きリムを選択

DT Swissは、ARC、ERC、GRCにフック付きリムを採用している。

その理由として同社は、一般ユーザーのすべてが、フックレスの5barという空気圧上限を知っているわけではないこと、そして、仕様として使えるのがチューブレスタイヤに限定されることを理解しているわけではないことを挙げる。

Scopeは、ロードではフック付ホイールで、一方で幅広タイヤを低圧で使うオフロードではフックレスホイールという明確な方針を採用。フックを設けることでホイール1組当たり50~60gほど重くなるものの、その重量を別の部分で削減している。

ENVEは4.5 Proでフック付きへ回帰

ENVEの新型4.5 Proも、従来のフックレスからフック付きリムへ変更された。

フックレスには軽量化という利点があるが、リム先端を細くすると、衝撃を受けた際にタイヤを切るような形でピンチフラットを起こしやすくなる。ENVEは先端を広くしたフックレスビードで対策したものの、その補強が重量増加につながった。

そこで4.5 Proではフックを復活させ、別の部分から素材を減らす設計に変更した。また、内幅25mmのリムとUAE Team Emirates-XRGが使用する28mmタイヤをETRTOの適合範囲に収める必要性があったことも、設計変更の背景にあったようだ。

ZippとCADEXはフックレスを支持

Zippは、幅広タイヤを低圧で使用し、タイヤ自体をサスペンションとして機能させる思想からフックレスを支持する。同社によれば、この変更によって一部製品では重量と小売価格をそれぞれ20%削減しながら、走行性能も向上させられたという。

CADEXも「100%フックレス」を掲げる。ただし、同社が問題視しているのはリムではなく、タイヤビードの伸びと製造公差だ。

CADEXはカーボンやケブラーで補強した伸びにくいビードを採用し、MaxxisやVittoriaともタイヤを共同開発。同社は、タイヤ内部の空気が急速に抜ければ、フックの有無にかかわらずタイヤがリムから外れる可能性があると主張する。

Schwalbeはフックレスの安全基準強化を要求

メジャータイヤメーカーのSchwalbeも、現在のフックレス安全基準は十分ではないと指摘している。

現行のISO試験では、表示された最大空気圧を10%上回る状態を5分間維持できればよい。これに対しSchwalbeは、最大空気圧の60%増しという条件で、少なくとも1時間にわたって試験している。

タイヤは圧力を受け続けると徐々に伸び、その後に不具合が現れる場合があるためだ。同社は、将来の安全基準として最大空気圧の1.5倍に耐える安全係数を提案している。

SchwalbeとCADEXはフックレスに対する立場こそ異なるが、タイヤビードの直径、伸び、製造公差をより厳しく管理すべきという点では共通している。

カーボンスポークと新素材が次の開発競争へ

ホイールの次の技術競争として注目されているのが、スポークとカーボン積層の進化だ。

DT Swissはカーボンスポークを重要な開発領域と位置づける。

一方のENVEは、現時点で既存の高性能スチールスポークを空力性能で上回るカーボンスポークを見いだせていないとして、慎重な姿勢を示す。しかしグラベル用途では、高強度繊維のDyneemaも候補に挙げている。

CADEXのMax Technologyは、カーボンスポークを薄いエアロ形状のハブフランジに直接接合するものだ。ハブとスポークの接合部を一体化することで、剛性、反応性、軽量性、空力性能の向上を目指し、将来的にはグラベルへの導入も検討している。さらにCADEXは、カーボンの靱性(衝撃を受けたさいの壊れにくさ)を高める素材としてボロン(boron)にも注目。

Zippも、従来は利用できないと考えていた高弾性・高剛性素材をリムの特定部分に配置し、衝撃時の破損の仕方を制御する研究を進めている。

3Dプリントと高速試作がホイール開発を変える

製造技術そのものも進化している。

ScopeのArtechシリーズは、航空宇宙分野の研究を応用したAeroScalesと、Scalmalloy製の3Dプリントハブを採用する。鱗状の表面構造を回転するホイールに最適化し、空力性能を高める設計だ。

Zippでは3Dプリントによって試作用金型を短時間で製作し、プリプレグカーボンから走行可能なホイールまで約90分で完成させることも可能だという。1日で約8種類のリムを試作する場合もあり、実物を迅速に製造して走行試験を行う開発手法が、新製品開発を加速させている。

まるでビジネスで人気のPDCAサイクルを高速で回すという考え方のようだ。

まとめ:ホイールとタイヤの未来は「統合設計」と「安全性」か

以上の各社の考え方をふまえると、将来のロードバイク用ホイールは、単に軽く、リムハイトが高いだけの製品ではなくなるだろう。

タイヤ幅とリム幅の最適化、低圧化、横風での安定性、衝撃への耐久性、スポーク素材、製造公差まで含めた全てを統合するような設計が重要になるのだろう。

そしてフックレスについてもロードでも主流になるのか、グラベル中心に定着するのかはまだ分からない。

しかし、どちらの方式を採用するにしても、ホイールとタイヤの適合性を明確にし、安全基準を現実の使用条件に合わせて強化することが、技術進化の前提となるだろう。

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