フィンレー・ターリング死亡事故の背景は?警察説明から判明した事故当時の状況とは?

フィンレー・ターリング死亡事故で警察が経緯を説明。ポルトガル一周で車両がコースへ進入した背景とは?

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8/14に開催されたヴォルタ・ア・ポルトガル第8ステージでNSN Cycling Teamの育成チームで走るまだ19歳のフィンレー・ターリング(Netcompany INEOSのジョシュア・ターリングの弟)が死亡したニュースは、世界中で大きく報道されるに至った。

ロードレースに普段興味のない日本人でもそのニュースにネットなどで触れた人は多いだろう。

当初の報道ではコースを逆走した一般車両と衝突ということだったが、各メディアや警察の調査などで少しずつ詳しい状況が判明してきている。

今回は警察による説明などを踏まえてフィンレー・ターリング死亡事故当時の状況を少し追っていくことにする。

情報源:”It is impossible to station an officer at every entry point” – Fin Tarling’s passing likely explained by myriad of bad coincidences

事故はどのようにして起きたのか?

事故は第8ステージでフィンレー・ターリングがメイン集団から遅れ、後方を単独で走行していた時間帯に発生した。事故は単一の原因ではなく、複数の不運な条件が重なって起きた可能性が指摘される。

まず、ポルトガル共和国国家警備隊(GNR)の説明によると一般車両は警察官が配置されていない脇道からレースコースへ進入していたようだ。

このとき運転手は集団が通過した後、沿道にいた人へレースが終了したかを確認し、「最後の選手も通過したからOK」と伝えられた可能性があるとのこと。しかし、実際にはターリングが後方を単独で走っており、レース終了を示す回収車も通過していなかった。

同警備隊GNRによると、一般車両の運転手はアクセス道路で一度停止し、プロトンが通過するのを待っていた。その後、周囲の人へレースが終わったかを尋ね、最後の選手まで通過したとの回答を受けてコースへ進入したとみられている。

レースは法律上の道路の走行方向とは逆方向に進行していた。一方で運転手は法律上の正しい車線・進行方向を走行していた。この点でプロトンの走行方向とは逆方向になっていた。

そしてターリングが見通しの悪い左コーナーへ入った際、両者が衝突したという。

なぜ車両がコースへ進入できたのか?

車両が進入したのは、主要道路へ接続する比較的小規模な脇道だった。

交通量や人の出入りが多い主要な交差点には警備要員が配置されていた一方、この進入口には警察官がおらず、標識による規制だけが行われていたという。

たとえ世界最大規模のツール・ド・フランスであろうと、どんなレースでもそのコースへ接続するすべての道路・進入口に警察官を配置することは現実的に著しく困難であり、事実上不可能だ。幹線道路、車両や歩行者が進入する可能性の高い地点を優先するのは合理的で当然である。

今回の警備体制はそのような合理的な判断に基づいて他レースと同様の体制となっていた。

今回の運転手はプロトンが通過したことでレースが終わったと誤解した判断した可能性がある。周囲にいた人もレース終了を知らせる回収車の役割を知らず、まだ後方に選手が残っていることを認識していなかったとみられる。

なぜターリングの前方に警察車両がいなかった?

今回のレースでも集団から遅れた選手たちの最後尾である回収車付近には警察車両1台とオートバイ2台が配置され、遅れた選手を保護することになっていた。

ところが事故前にはターリングを含む3人の選手がそれぞれ異なる間隔でばらばらになってメイン集団から遅れ始めたようだ。そこで2台の警察バイクは、ターリング以外の2名の選手につくため前方へ移動していたらしい。

ターリングは登りでチームカーと並走していたが、下りへ入ると加速してサポートカーの前へ出た。そして事故発生時には彼の前方を走る運営側の車両がない状態になっていた

さらに不幸だったのは、衝突地点は周辺でも数少ない危険なブラインドコーナーの一つだったことだ。対向車の存在を確認してから回避するための時間やスペースはほとんどなかったとされる。

複数の不幸な条件が重なった死亡事故

以上の内容が現時点で報じられているものだ。それを簡単に整理し直すと次のようになる。

  • 一般車両の進入口には警察官がいなかった
  • 沿道の人も後方に選手が残っていることを把握していなかった、かつ運転手もプロトンの通過をレース最後尾の通過と判断したが、実際にはレース終了を示す回収車がまだ通過していなかった
  • ターリングがメイン集団から離れて単独で走っていて、護衛用オートバイが一時的にターリングの前方から離れていた
  • ターリングが下りでチームカーを追い越して加速した後が見通しの悪いコーナーだった

大会運営費・警備費の増加と対策の限界

ヴォルタ・ア・ポルトガルは11日間にわたるステージレースであり、広範囲の道路を完全に管理するには多くの警察官、警備員、車両、運営スタッフなどが必要になる。

一方、同大会の予算は、それ以上の走行距離となる他のレースと比べて少ないとされ、限られた予算がすべての進入口へ警備員を配置できなかった事情に影響した可能性があるだろう

ただし、予算不足と今回の事故との間に直接的な因果関係があるわけではないだろう。

元プロチーム監督のジェローム・ピノーは、プロレースの開催費用が高騰していると言う。そんな潮流がある中で一部の主催者が十分な安全対策を実施できなくなっていると話す。そのうえで、安全を保証できない大会については、開催を承認すべきではないとの考えをも示す。

問われる「メイン集団通過後」の安全管理

公道を使用するロードレースでは、先頭集団だけでなく、遅れた選手やサポート車両を含むレース隊列全体を保護しなければならない。

今回の事故は、

  • プロトン通過後もコースが開放されたわけではないこと
  • メイン集団だけでなくレース最後尾にとっても安全対策が重要であるということ

こうしたことを、観客や開催地の住民にどのようにすればしっかりと伝えられるかという課題を浮き彫りにしたと言えるだろう。

警察官をすべての進入口へ配置できないのであれば、物理的なバリケード、三角コーンの設置、訓練された警備員、明確な表示、地域住民への事前周知など、複数の対策を組み合わせる必要がある。

19歳のターリングの死を「不運な偶然の連鎖」だけで終わらせず、どのようにしてさらなる安全対策を推進できるかが今後のロードレース界に求められるだろう。

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