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サドルのBrooksが英国への製品供給をストップ

なぜ、Brooks(ブルックス)が英国への製品供給をいったん停止したのか?

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自転車のサドルで圧倒的に「歴史」と「伝統」を感じさせるのが革サドルで有名な英国ブランドのブルックス(Brooks England)。

2002年に実はイタリアの有名サドルブランドのセラ・ロイヤル(Selle Royale)が買収し、そのグループ下に入っている。

そんなブルックスが、「英国で生産される」サドルを「英国の小売店」へ販売するのをいったん中止するもよう。いったい何が起こっているのか?

ブルックスのサドルと英国のEU脱退

公式サイトの「UK Shipping Notice」というページには、「Important Notice」として、今回の中止措置の背景が次のように書かれている。

At Brooks England, we continue to produce each leather saddle in our West Midlands factory in more or less the same manner as we have for over 150 years. However, upon their completion, since some time these saddles are shipped first to our logistics centre in Italy and from there to Cyclists around the world. Due to this, the ongoing changes in the Brexit situation have made it necessary to temporarily suspend all new orders to the UK at this time. However, orders received before 12.00 CET on 29 December will be regularly processed. Additionally, we will be extending our return window for purchases made prior to this announcement so as to allow for easy returns despite procedural delays. For information about returns or any other questions, please contact our Customer Service department who will be happy to assist you. We appreciate your patience while we analyse this situation and plan the proper administrative steps moving forward.

「英国ブランド」であるがゆえに、背景にあるのはブレグジット(Brexit)である。

VAT登録のコスト

英国のEU脱退については昨年末にすったもんだのあげくようやく、ひとまず貿易関税などの取り扱いが合意された。貿易関税はゼロとの状態が継続されることになった。ただ、かつての税関検査が復活するため、物流や人の移動には混乱・遅延が生じる可能性がある。

そして面倒なのが日本でいう消費税的な税金である「付加価値税(通称VAT)」の扱いである。

100円のものに20円のVATをつけて120円で販売するとしよう。その20円の税金は国家に納付しなければならいわけだが、国家はそのために企業に固有のID番号みたいなものをつけ、それを登録させてその登録情報に基づき納付・徴収の事務手続を行っている。もちろん法律上、登録の義務がなければ徴収されない。これをVAT登録と呼ぶ。

現在EU加盟国内の企業は加盟国のお客相手ならば、一定の限度額を超えない限りVATについてはその情報の登録をする必要がない。自国におけるVAT登録が必要なだけである。他国においてVAT登録をする必要がない。税金事務はEU加盟国同士ならばかなり簡素化されている。余計なコストが不要なのである。

だが英国のEU脱退によって、この他国におけるVAT登録の簡素化というメリットが奪われる。

これまで不要だった税金に関する余計な事務コストが発生すると考えられる。ジ作業が増えれば追加の人員も雇わなければならない。人員が増えれば人事コストもあがる。さらに事務処理システムも改修しなければならない。また、新たに発生する書類の管理スペースも必要となるか。1つが変われば他のところも影響を受ける。組織が大きければ大きいほど影響は大きくなる。

最終的にはそれらのコストは製品価格への上乗せという形で回収・相殺される。

今後EUから英国の客へ販売する場合には、この事務コストがかかると思われる。

ブルックスのサドル供給システム

そして、ブルックスは上述のようにイタリア企業が保有する英国ブランドである。実はブルックスのサドルは、英国で生産されるが、いったんそれらをイタリア本国へ輸送し、イタリアの配送センターから英国を含め世界各国に届けるという仕組みになっている。

英国の脱退により、今後はEU加盟国と非加盟国(英国)との間の輸入・輸出という関係に立つようになる。そして、これまで不要だったイギリスでのVAT登録も必要となり事務コストも増える。

そこで、ブルックス側(セラ・ロイヤル側)は、こういったコスト処理をどうするのかなどを検討するためいったん英国の客・英国の小売への輸送をストップした。

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