熱く美しい1日。2023ツール・ド・フランス第20ステージの感想・結果・ハイライト動画

2023ツール・ド・フランスはこの第20ステージで実質的に総合優勝が確定する。ロードレースファンは知っていることだが、現代のツールは最終日の第21ステージは総合争いをしないのが暗黙の了解となっているからだ。

またこの第20ステージは今年のツールで最後の山岳ステージ。ただ山頂フィニッシュではなく、山頂から少し下って平坦基調を数キロ走ってからのゴールとなる。

今年の2023ツール・ド・フランスを象徴する漢字として🐷は「驚」を当てたが、昨夜の第20ステージの結末は驚愕や衝撃というよりは「どこか感慨深い」という感情を抱かせるものだった。当然人によっては感じ方は異なるが。

第20ステージのコース

いつもどおりこちらの別記事で。

ポガチャルはどうする？今夜の2023ツール・ド・フランス第20ステージのコースについて

感想・ハイライト

押し寄せるピノ応援団

今年限りの引退を表明していたフランスの熱き漢、そしてフランスロードレース界の象徴ともいえたティボー・ピノ（Thibaut Pinot）。現役最後のツール・ド・フランスでの最後の山岳ステージとなった。そんな彼を応援するため大応援団がツールに押し寄せている。

また逃げるのか！

今日もまたあの男が逃げた。第18ステージで逃げ集団の逃げ切りをお膳立てし、第19ステージでも逃げたヴィクトール・カンペナールツ（Victor Campenaerts）だ。

チッコーネーのためにトレック動く！

ロット・デスティニー（Lotto-Dstny）の2名による逃げはその後追走に吸収されるが、そこからLidl-Trekが山岳賞ジャージを着るジュリオ・チッコーネ（Giulio Ciccone）のために動く。

マッズ・ピーダースン（Mads Pedersen）やマティアス・スケルモース（Mattias Skejlmose）がチッコーネのためにアシスト。

最初の山岳を1位通過（2位も3位もLidl-Trekのチームメイト）。その後、2つ目の山岳でも次のように1位通過する。

ここでも2位にチームメイトのスケルモースが入る。

このチッコーネの先頭集団を追いかけていた追走から、この山岳の山頂からティボー・ピノ（Thibaut Pinot）が加速！

そしてピノは先頭集団に追いつくことに成功。

その後もチッコーネは順調に山岳ポイントを積み重ね、3級山岳を1位通過したときに今大会の山岳賞ジャージ獲得を確定させる。

スケルモースが最後までアシストとして良い仕事をした。

ピノ独走へ！

最後から2つ目の1級山岳プチ・バロン（Petit Ballon）の途中でピノがアタック。チームメイトのヴァランタン・マデュアス（Valentin Madouas）も彼を追いかけ二人で逃げようとするが、そのマデュアスがピノについていけず脱落。これでピノが単独で逃げる展開へ。

ピノがツール・ド・フランスで最後の勇姿を見せる！このアタックでフランス人は絶頂！

ポガチャル復活！ヴィンゲゴーとラストバトル！

あの第17ステージで衝撃のバッドデーによる大失速を喫してしまったタデイ・ポガチャル（Tadej Pogačar）。彼があれほど苦しむ姿を初めてみた。そんなポガチャルが本来の調子ならばこのステージは必勝ともいうべきコース。しかし、攻撃をしかけるだけの体調にあるのか、パワーは回復しているのか懸念されていた。

しかしそんなファンの不安を裏切り、最後の1級山岳プラツァーヴァーゼル（Platzerwasel）でアタックをしかける！

このポガチャルのアタックについていったのが、ポガチャル失速の第17ステージで優勝したAG2Rのフェリックス・ガル（Felix Gall）と、もちろんヨナス・ヴィンゲゴー（Jonas Vingegaard）の二人だけ。ガルはこれですっかりAG2Rの若きエースとしての座を獲得したのではないか。

ただ後続との差がそれほどつかない。さらに山頂フィニッシュではなく下ってからしばらく走ってのゴールとなるため、ヴィンゲゴーたちが牽制すれば追走が追いつくことが可能。

それを嫌ってたヴィンゲゴーとガルは山頂を超えたところで話し合い。ポガチャルは後方からチームメイトのアダム・イエーツ（Adam Yates）が合流しようとしているのでその話し合いには加わらないし、先頭を引く必要は全くない。

アダムが合流してポガチャルのアシストに回ればスプリント力で絶対的に劣るヴィンゲゴーは相当不利になる。

結局先頭3人の速度が上がらないままだったので、後方からアダム・イエーツとサイモン・イエーツ（Simon Yates）が合流し、合計5名に。

そして最後は･･･

キャリア初、そして最も苦しんだツール・ド・フランスをポガチャルがステージ優勝で締めくくった。ゴールの瞬間の喜びようがここ数日どれだけ苦しんだのかを表していると思う。そしてチーム名とのアダム・イエーツもこれで無事に総合表彰台3位を確定。ヴィンゲゴー含めて明日とんでもない事故でも起こらない限り、3人の総合表彰台登壇が決定した。

ピノは敢闘賞を獲得。最後のツールで記録と記憶に残る走りをした。

このステージは最終的にはヴィンゲゴー vs ポガチャルのラストバトル、ヴィンゲゴーの危なげない総合優勝、ポガチャルの復活とステージ優勝、ピノの有終の美、UAEの総合表彰台2位と3位という結果になったわけだが、驚愕と波乱と興奮にだらけの2023ツール・ド・フランスの最終日前日においてはどこか美しい終わり方と言えるのではないだろうか。

レース全体のハイライト動画

結果

ステージトップ10

1	Tadej Pogačar	UAE Team Emirates	1位との差
2	Felix Gall	AG2R Citroën Team	,,
3	Jonas Vingegaard	Jumbo-Visma	,,
4	Simon Yates	Team Jayco AlUla	,,
5	Adam Yates	UAE Team Emirates	0:07
6	Warren Barguil	Team Arkéa Samsic	0:33
7	Thibaut Pinot	Groupama – FDJ	,,
8	Pello Bilbao	Bahrain – Victorious	,,
9	Halland johannessen Tobias	Uno-X Pro Cycling Team	0:50
10	Rafał Majka	UAE Team Emirates	,,

総合トップ10

1	Jonas Vingegaard	Jumbo-Visma	1位との差
2	Tadej Pogačar	UAE Team Emirates	7:29
3	Adam Yates	UAE Team Emirates	10:56
4	Simon Yates	Team Jayco AlUla	12:23
5	Carlos Rodríguez	INEOS Grenadiers	13:17
6	Pello Bilbao	Bahrain – Victorious	13:27
7	Jai Hindley	BORA – hansgrohe	14:44
8	Felix Gall	AG2R Citroën Team	16:09
9	David Gaudu	Groupama – FDJ	23:08
10	Guillaume Martin	Cofidis	26:30

各賞ジャージ

ジャージ	選手名	チーム名
マイヨ・ジョーヌ（総合首位）	ヨナス・ヴィンゲゴー（Jonas Vingegaard）	Jumbo-Visma
マイヨ・ヴェール（ポイント賞）	ヤスパー・フィリプセン（JasperPhilipsen）	Alpecin-Deceuninck
マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ（山岳賞）	ジュリオ・チッコーネ（Giulio Ciccone）	Lidl-Trek
マイヨ・ブラン（新人賞：25歳以下）	タデイ・ポガチャル（Tadej Pogačar）	UAE Team Emirates