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Rapha






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今年の移籍市場のニュースが静かな理由とは?UCIのルール改正との関係について
今年の移籍市場に関するニュースを見ていて、昨年までとは異なる違和感というか、「妙だな・・・?」という感覚を抱いたことがないだろうか。具体的にいえば、移籍市場が静か、または移籍契約の発表が少ないという感覚だ。
昨年までならば、8/1が移籍市場の解禁日。ここでいう解禁とは法律的な意味で移籍契約に署名すること。つまり本契約が成立することだ。そのためこれまでなら8/1からどんどん移籍のニュースが流れてくるものだった。
しかし今年は静かな8月となっている。これはなぜか?実は昨年の8月夏前にUCIは移籍に関するルールを変更している。これがその静けさの理由の1つだと考えられるのだ。どういうことか?
情報源:The UCI overhauls the rules on rider transfers
昨年8月に改訂されたUCIルールをみてみよう。UCI CYCLING REGULATIONS PART 2 ROAD RACESのVersion on 17.06.2024(PDF直リン)では次のような内容となっている。
2.15.120 a
A transfer period exists and applies to all changes of team, whether between two UCI
WorldTeams or between a UCI WorldTeam and a UCI ProTeam.
The transfer period for any change of team during the season extends from 1-15 August.
For any change of team between two seasons, the transfer period extends from 1 August
to 31 December.
Two registration periods exist for the registration of riders with UCI WorldTeams.The first registration period extends from 1 to 15 August and applies for registrations with
immediate effect during the season.The second registration period extends from 15 October to 31 December and applies for
the registration of riders as from 1 January of the following year.The registration periods apply for any rider registration with a UCI WorldTeam, whether
the rider was registered with another team or not at the time of the envisaged
registration.The provisions in this section (2.15.120 to 2.15.125) apply both to teams which have UCI
WorldTeam status and applicants for a UCI WorldTour licence.(article introduced on 1.07.10; text modified on 1.04.11; 1.01.15, 17.06.24)
ちょっと長いが簡単に要点だけ抽出すると以下の通りだ。
これまではシーズン途中とそれ以外の通常の移籍について移籍期間が、それぞれ8/1~8/15と8/1(10/1ではない)~12/31と設定されていた。
しかし修正後の新ルールではUCIに登録されないと移籍は認められない。その登録(申請)期間がこのように2つ設定された。これがUCIルール変更の要点だ。期間内に登録が必要とすることでいろいろな意味で明確性を確保し、余計な争いを予防しようという趣旨だろう。
つまり、終戦記念日である本日8月15日がシーズン途中での移籍についての登録最終期限となる。ここでのポイントは「登録」するための期間であって、「登録」以外の行為については書かれていないということ。
実際には、「調査」→「接触」→「交渉」→(「予約(囲い込み)」)→「契約(署名)」→「UCIに登録」という流れになっているだろうが、上の規定ではその最終工程についてのことしか書かれていない。
一方でその規定のすぐ下にある規定がこちら。
2.15.120 b
A UCI WorldTeam or licence applicant may only recruit riders during the transfer
period. For the purposes of this article «recruit» shall be deemed to mean concluding a
contract with a rider to ride for the UCI WorldTeam or licence applicant’s team.(article introduced on 1.07.10; text modified on 1.04.11; 1.01.15, 17.06.24)
簡単にいえば「移籍期間以外では選手との間で契約成立を完了させるのは禁止」とするものだ。
上UCIルールには「transfer period」の定義が書かれていないため、ここで使われている2つの用語「the transfer period」と上「registration period」との関係性や相違がよくわからないが、「the」がついているのでおそらく同じ意味なのだろうと解釈することにする。
要するに、登録期間以外では契約に署名さえしなければOKということだ。
これまで発表されているレムコ・エヴェネプール、ディラン・ファン・バールレ、ヤスペル・ストゥイヴェン、ディラン・フルーネウェーヘンなど有名選手の移籍は全て来年度の1/1から発効する契約であり、新ルールの下では10/1までは契約に署名できないというものになっている。ただし署名以外のことはできるので、交渉や発表は自由である。
以上のように2024年まではシーズン途中の移籍契約であろうと次年度1/1から発効する移籍契約であろうと8/1からは契約書に署名できるというルールだった。しかし、今年からは後者の契約については10/1にならないと契約書に署名できない。そこでその移籍契約については発表が10月ごろにずれ込むのだろうと予想される。
今年の移籍市場がまだ静かなのはこのような移籍についてのUCIルール変更がその要因の1つになっているのだろう。