落車と未来と。Ian Boswell(元Katusha-Alpecin) の場合。

情報源:The crash that ended one career and started another

去年までKatusha-Alpecinに所属していたイアン・ボスウェル(Ian Boswell)。パンチャー寄りのクライマー。元チームSkyでも走っていたアメリカ人選手。

今回のお話は、そんな彼が「ロードレース」を引退することになった原因の落車と、それをきっかけにして見つけた未来のお話。教科書に載せててもいいレベルのお話。記事全文は長いから、いつもどおり抜粋しながらご紹介。



(1) 落車と脳へのダメージ


2019 ティレーノ~アドリアティコ第4ステージ



2019年のティレーノ~アドリアティコ、第4ステージでそれは起きた。覚えている人もいるかもしれないが、そのステージではゲラント・トーマスが中盤で胃の問題を抱えてリタイア。優勝者のアルクセイ・ルツェンコも終盤で2度の落車に巻き込まれたり、トニーマルティンやデ・プルスも落車したりと、とにかくいろんなトラブルが多い日だった。



そしてKatusha-Alpecinの選手イアン・ボスウェルもその日落車。激しくバイクから放り出され、頭を地面に打ちつけ意識を失った。救急隊が到着してもなお動かない。そんな状態だった。

やがて意識を回復し、その場から起き上がろうとしたとき彼が覚えているのは、監督やメカニックがスペアバイクを持って駆けつけてきたこと。そしてバイクに乗れるかどうか質問してきたこと。

その時、ボスウェル本人は「まだいける」と思っていた。しかし、「幸運にも」そう、幸運にも、その監督が「アカン。病院や」と考えた。というのも、「幸運にも」チームドクターがTV映像でその落車の場面を見ていたから。ドクターが監督に「これはアカン。病院へ運べ」と指示していた。そして病院へ救急搬送。即入院となった。



脳震盪と、その後遺症



当日だけ病院で過ごし、その翌日には脳と神経の専門家による診断を受けるためモナコに移動。婚約者とかつてのチームメイトがボスウェルを運んだ。

そこで彼はMRIスキャンを受けた。その結果、脳に損傷が残っていることが確認。当日入院したその病院では検査されていなかった点だった。そしてボスウェルはここから後遺症に苦しむことになる。

婚約者から「絶対安静よ」と言われていたにも関わらず、プロ選手の性がそうさせるのか、ゆるく運動を始めようとインドアトレーナーに乗った。しかし体を動かし始めた直後、めまい、吐き気、不快感が一斉に押し寄せてきた。たまらずマシンから降りる。明らかに後遺症だった。人生の転機が起ころうとしていた。

同時、5月に婚約者との結婚が迫っていた。ボスウェルは故郷へ戻ることになる。



(2) 自分を見つめ直す時間と意識の変化



脳のダメージから回復するための穏やかな休息の日々で、彼は自分自身について見つめ直す時間を得た。

以前の自分の肉体に戻れるのか、ハイレベルなトレーニングを積めるのか、それが無理なら自分はどうすべきなのか、そもそも自分てどういう人間なのか。自分の過去と現在、自分の過去と未来、自分の現在と未来。日々自問自答を繰り返した。しかし明確な答えは出ないまま。



同時に彼は、15年ぶりにレースのない穏やかな時間を過ごしながら、ちょっとした日常に輝きを見出すようにもなっていた。たとえば、木から落ちた果実を拾うこと、外出して林檎を買うことなど、そんな些細な日常に感謝を感じ、生きていることの幸福を感じるようになっていた。

結婚後は心身ともに安定しており、大きな問題も起きていなかった。ただそれでもはやりロードレース界への未練は断ち切れないまま。いつかは復帰できるのではないかとも考えることもあった。そして、自分に何ができるのか、何をしたいのか自問をつづけ、その答えがうっすらと見え始めてきたとき、あるプロチームからオファーが届いた。

彼はすぐに現在の肉体のデータやトレーニングのデータを送った。



(3) 新しい未来へ



しかし、すぐに彼はそのチームに電話した。オファーを断るために。彼は正直に全てを話した。

もう二度とプロ選手としてハイレベルな肉体には戻れないと考えていること、そしてこれからの人生をどのように生きようとしているのか、自分がやりたいこと・できることなどを打ち明けた。そして、「ロードレース」からの引退がこの時点で決定的なものとなった。歩くべき道はこのとき明確となった。

ボスウェルは「ロードレース」は引退したが、長距離ライドへの愛は衰えず、今後は「グラベルライダー」として各種のイベントで走ることになる。ロードレースから違う未来へと歩み出している。

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後遺症からの回復、そして人生を見つめ直していた時間など、それらの時間を彼をそのすぐそばで支えたのは、婚約者であり妻となったGretchenである。





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