スーパータックポジションのエアロ効果について
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先日発表されて世界各所で大きな議論を呼んでいるのが、ダウンヒルに特化した乗り方の「スーパータック」と呼ばれるポジションをUCIが禁止することである。
理由は下りでの安全性の確保ということだが、記憶にある限りではこのスーパータックポジションで大けがをした選手というのはいないように思われる。まぁ危険であることには違いないと思うが。
一方気になるのが、このスーパータックポジションのエアロ効果である。本当に効果があるのか?あるとしてどの程度空力性能が変わり、ワット数が節約できるのか?
これらの点につき、約14年に渡りF1マシンの設計・開発チームを率いてきた世界最高峰の技術者であり空力性能の専門家であるJean-Paul Ballardが、実際にスーパータックポジションの効果を検証するため、風洞トンネルでの実験を行った。
情報源:Wind tunnel experts on UCI position bans: Racing will be slower and less exciting
スーパータックのエアロ効果と節約できるワット数は?
さっそく次の表を見てほしい。情報源記事に掲載されいるものと同じ表だが、一部だけブタが独自に日本語にしてある。この表は、平坦のポジションと下りのポジションそれぞれで、複数の乗り方でのエアロ効果を比較したものである。
なおCdAという用語については、Cdが空気抵抗係数を、Aが前面投影面積を示す。CdAが低いほど空気抵抗が少ないことを意味する。そして、40~70の数字は時速である。
(表は横方向にスクロール可能)
CdA | Deltas to Ref | 40 | 50 | 60 | 70 | |||||
平坦のポジション: | Absolute | Delta to ref | Absolute | Delta to ref | Absolute | Delta to ref | Absolute | Delta to ref | ||
下ハンで腕をまっすぐ伸ばす | 0.260 | 0 | 211 | 0 | 412 | 0 | 713 | 0 | 1132 | 0 |
下ハンで腕を曲げる (1) | 0.246 | -0.014 | 200 | -11 | 390 | -22 | 674 | -38 | 1071 | -61 |
ブラケットを握り、腕は地面と水平(2) | 0.244 | -0.016 | 198 | -13 | 387 | -25 | 669 | -44 | 1062 | -70 |
No hands ‘invisible aerobars,’ horizontal forearms (3) | 0.231 | -0.029 | 188 | -24 | 366 | -46 | 633 | -79 | 1005 | -126 |
“Aerodynamic suicide” (4) not measured | ||||||||||
下りのポジション: | ||||||||||
Hands in drops, full bent arms (not pedaling) | 0.225 | 0 | 183 | 0 | 357 | 0 | 617 | 0 | 979 | 0 |
Super tuck (not pedaling) | 0.194 | -0.031 | 158 | -25 | 308 | -49 | 532 | -85 | 844 | -135 |
一番下、下りのポジションでのところに「スーパータック(Super tuck)」の項目がある。その1つ上は、ハンドルのドロップ部分を握り、腕を曲げた状態(ペダルは回さない)ポジション(いわゆる下ハン)である。その2つを見比べてほしい。
スーパータックのほうがCdAが低い、つまり空気抵抗が少ないことがわかるだろう。また、下りのポジション時速70㎞では単なる下ハンよりも135ワットもの節約が可能となっている。
これはとてつもないエネルギーの節約効果があると言えるだろう。もちろん、さらに速度が上がればもっと大きな差となろう。時速100㎞になれば200ワットぐらいの差になるかもしれない。
そら、プロトンでみんなこれやりますわ。