ロードレースと犠牲:フランスの21歳Théo Nonnezを引退に追い詰めたものとは?

2016年にジュニアのフランス王者に輝いた21歳の若者がロードレースからの早すぎる引退を発表した。

その選手の名はThéo Nonnez。フランスのワールドツアーチーム Groupama-FDJの育成チームで走っていた選手だ。将来有望な選手だった彼に一体何が起こったのか?次のツイートを見てほしい。

このツイートでリンクされているチーム公式ページには、彼の「心」に何が起きたのかが詳しく書かれている。

昨年のクリスマス前に心が壊れた

ロードレースに打ち込むにはいろいろな制約を抱えながら続けなければならない。高いモチベーションがなければとてもじゃないが続けられるものではない。特にプロならばなおさらだ。

Théo Nonnezももちろん当初は高いモチベーションと野心を抱いていた。育成チームからワールドツアーチームへ昇格することも当然狙っていた。

ただそうした「制約」の存在が、ワールドツアーチームへのステップアップなどの利益よりもどんどん彼の中で大きくなっていった。つまり、ただただ制約に制約を重ねる日々という感覚が彼の心を支配していった。一言で乱暴にまとめてしまうと心理的ストレスの増大だ。

そんな心理状態での日々で、モチベーションはどんどん低下。そんな中でもなんとか無理やり自分を動かしトレーニングはやってきた。だがしかし、昨年のクリスマス前ひどい天候の中でトレーニングライドにでかけてすぐ彼の心は「決壊」した。

曰く、バイクの上で涙が止まらなくなったらしい。そして同時に「もう全て終わりにしよう。変わるべきなんだ。こんなのはおかしい」と口から出たようだ。

最終的に自転車に乗る楽しみは全て喪失したと述べている。

そしてその後のチームトレーニングキャンプの前に、彼はチームのスタッフや医師らと話し合い、自分が今どういう状態なのかを告白した。そして今回の引退発表につながった。

トレーニングと栄養失調で体重が10㎏減。「乗れば食べられる」

昨年のひどく低調な心理状態の中でも、最後のモチベーションを振り絞りトレーニングを重ねていたようだ。しかし、結果的にはそれもやはり間違いだった。栄養失調に陥ったのだ。

もちろん選手である以上、栄養学の基本的なことは知っている。しかし壊れかけていた心は、正常な判断力を奪っていたのだろう。彼は「運動をあまりしない一般人」を基準にして栄養をとっていたが、激しいトレーニングを重ねる「プロの自転車選手」として必要な栄養を考えていなかった。当然後者のほうが必要なカロリーは多い。彼は圧倒的に栄養が足りていなかったのだ。

その結果がどんどん痩せていき、最終的には10㎏も体重が減った。プロの自転車選手としての肉体からさらに10㎏のマイナスである。ロードバイクやロードレースのファンならこれがいかにとんでもないことかよくわかると思う。

ただでさえ鬱状態のようなメンタルだったが、こんな肉体の悪い変化が心理状態にも悪影響を及ぼし、ついには「乗れば食べられる」という状態にまでなっていた。

上述のようにトレーニングへのモチベーションはすでになくなりかけていたが、その最後のモチベーションが「食事」になっていたのだ。強くなるか速くなるではなく、食事のために乗るだけ。しかもその食事もプロとしての食事ではなく、ただの一般人を基準した食事である。もうなんかいろいろおかしい。

ロードレースと犠牲

いろんなスポーツの中で、特にロードレースは成功するために犠牲にするものが多いと言われるスポーツだ。

おそらくThéo Nonnezもそんな観念に囚われすぎたのだろう。彼の声明を読んでいると、強迫観念的に「犠牲を払わないと成功できない」と思いこんだ節がある。

たとえば、相談できる親しい友人たちとも距離をとっていたようだ。ロードレースは各地を転戦するので友人と会うチャンスも少なくなるという現実もあるだろうが、彼は「自分で壁を作っていた」とも語っている。

もっと早い段階で身近な人間に素直に話をできていれば、ここまで心理的に追い込まれることもなかったのではないだろうか。

さて、上述の公式ページには他にもいろいろ書かれているので興味あればぜひ読んでもらいたい。特にレースガチ勢にはモチベーションという意味でヒントになることがあるかもしれない。

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