グランツールの価値が低下?あえてグランツールに出ないほうが合理的?
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今年のジロ・デ・イタリアが閉幕した。最終日前日の衝撃的な逆転劇が大会を一気に面白くした。一方で華やかなそのグランツールの裏でも、各国で他のレースが開催されていて、UCIポイントを稼ぐべく戦い続けていた。
そんな中で、ナイロ・キンタナ擁するProTeamのアルケ・サムシックは、今年のジロ・デ・イタリアの出場チームに選ばれていたものの、その権利を放棄しジロには出場せず、ジロ以外のレースに出場する戦略を取った。
→過去記事:アルケア・サムシックがジロ・デ・イタリア出場を拒否。ツール・ド・フランスとブエルタ・エスパーニャに注力し、2023年のワールドツアー昇格を目指す
単純に考えればロードレースにおける大舞台の1つ、グランツールに出場するほうが目立つことができるし、メディアや世界のファンからの注目・関心も集めやすいはず。だが今年のアルケアはそのチャンスを手放した。
しかし、その代わりに手に入れた果実は大きなものだった。その果実とは、そうUCIポイントだ。
目次
5/6~5/29におけるUCIポイントラキング
次のツイートを見てほしい。
Despite not taking part in the Giro, TotalEnergies and Arkéa-Samsic have accumulated over the last three weeks more points than most WorldTeams: pic.twitter.com/Ct03l1MUez
— El tío del dato (@eltiodeldato) May 30, 2022
この画像のグラフは、5月6日から5月29日までの期間を対象として、全てのワールドツアーチームと全てのProTeamの稼いだUCIポイントをその順番に並べたものだ。ピンク部分がジロで稼いだポイント。グリーンがジロ以外のレースで稼いだポイントだ。
ジロに出場していないアルケアとトタルがトップ10入り
注目は10位のアルケア(Arkéa-Samsic)と8位のトタル(TotalEnergies)。どちらもジロには出場していなかったが、それでもジロ以外のレースでUCIポイントを確実に稼ぎ、上期間中のランキングで8位と10位となっている。
また同時に、ワールドツアーチームについては5位のロット(Lotto Soudal)と7位のコフィディス(Cofidis)も見てほしい。どちらもジロより、ジロ以外で稼いだポイントのほうが圧倒的に多い。それでも5位と7位という上位につけている。
ジロであまり目立てなかったロットとコフィディスも上位
今年のジロでのロット・スーダルについてはカレブ・ユアンが最初のスプリントステージで落車し、その後も勝利なしのまま途中で大会を去ったことが記憶に新しい。
→関連過去記事:カレブ・ユアンまさかの結末!2022ジロ第1ステージの感想と結果
一方で、逃げの王様トーマス・デ・ヘントが久しぶりに逃げ勝利を挙げたという朗報もあった。だがそれ以外ではあまり目立つことがなかった。そしてそれはコフィディスについても同様だろう。
ジロではどちらのチームもあまり活躍できなかったが、それでもこうしてジロ期間中のUCIポイントランキングではトップ10に入っている。
グランツールにでないほうがチームの生存戦略にとって合理的なのか?
2023年に向けたワールドツアーライセンスの椅子取りゲーム(空席は18)は、基本的にここ3年間のUCIポイント総数によって決定される。
そして今の時点で降格圏内になるワールドツアーチームはロット・スーダルとイスラエル・プレミアテックだ。
そして上述のようなジロ以外のレースでUCIポイントを大きく稼げる可能性があるのならば、今年のアルケアのようにグランツールに出ないほうがチームが生き残るために有利・合理的なのではないか?
またグランツールに出場したとしても、ロット、コフィディス、イスラエルのようにUCIポイントを稼げないのならば、グランツールには一軍を投入せず、その裏で行われるレースに一軍を投入したほうが効率的にポイントを稼げるのではないだろうか。
UCIポイント獲得ということだけを主眼にすれば、グランツールの価値はさほど高くなく、あまり特別に考える必要もないという結論になるだろうか。むしろ他のレースのほうがずっと重要になると言えるのではないか。
もちろんイネオスなどのようにグランツール制覇を目標とするチームもあるわけだが、少なくとも降格争いをするようなチームにとってポイント稼ぎという点ではグランツールの価値はほとんどないのではないか。
言い換えれば、今のUCIのシステムは降格争いをする一部のプロチームにとってはグランツールの価値を低下させるシステムになっているのではないだろうか?
少なくともアルケア・サムシックのジロに出場しないという戦略については、成功しているように思われる。
ポイント獲得という以外のメリット、目立つこと、スポンサー獲得などなどのメリットはまた別の話だが。
→関連過去記事:降格危機のLotto Soudalが新しいメインスポンサーを発表。2023年からチームLotto SoudalはLotto-Dstnyへ名称変更