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下りの専門コーチは有効か?ルーク・ロウが疑問、ガルのジロ総合2位を支えた準備
ロードレースのうち特にグランツールでは難関山岳が頻繁に登場する。そこで問われるのは登りの能力だけではなく、むしろ登りの能力以上にダウンヒルの実力が問われることも多い。
もちろん登りでアタックがかかって大きく展開が動くことも多いが、逆に有力勢が牽制しあって事前の想定とは異なりみんな一丸となって山頂を超えてしまうという展開も多いし、数秒の差だけしかつかないということも多い。
一方で大きな山岳の下りは当然に長距離・長時間のダウンヒルとなり、そこでは登りとは比べ物にならないほどの落車リスクが待ち受ける。
そして下りを苦手とする選手は、難易度の高い下りで決定的な差をつけられてしまうこともある。
たとえ近年はディスクブレーキや幅広タイヤで制動機能が以前よりもずっと向上したとしても、逆にそのだけ下りのスピードも速くなっているように思われる。エアロ性能追求の流れもそれを後押しする。
ならばダウンヒルに特化した練習と、それを指導する専門のコーチも必要なのではないかとなるが、Decathlon-CMA CGMのスポーツディレクター、ルーク・ロウが、下りの技術を指導する専門コーチの効果に疑問を呈した。
そのルークの考えの根拠となるのは、下りを課題としてきたフェリックス・ガルの2026年ジロ・デ・イタリア総合2位という成果だ。
Decathlon-CMA CGMの総合エースのフェリックス・ガルは高い登坂力を持つ一方、下りでのタイムロスが弱点とされてきた。
2023年ツール・ド・フランスのクールシュヴェルにフィニッシュするステージで優勝した際にも、下りでリードを失う不安があったと明かしていた。
2026年のボルタ・ア・カタルーニャでも、レムコ・エヴェネプールがペースを上げた下りで有力選手から遅れ、そのステージを制したヨナス・ヴィンゲゴーに最終的に2分以上を失ったこともあった。
しかし今年のジロに向けた対策ではチーム側は、ガルがコース上のすべての下りを映像で確認できるよう手配し、一部の区間では実際に試走も行った。
特に重視されたのが、全力で下る必要があるとチームが判断した4つの下りだった。
山頂に着いてから慌てるのではなく、雨になる可能性も含め、あらかじめその先の展開を受け入れておく。
今回のルーク・ロウの説明ではこうした心理的な準備も含めた万全の下り対策がガルの総合2位という結果を支える柱となっていた。
ガルはジロでステージ2位を5回記録し、ヴィンゲゴーに次ぐ総合2位で初のグランツール表彰台を獲得。その後のブエルタ・ア・エスパーニャでも総合3位に入った。
ルーク・ロウが現役時代から相棒のGことゲラント・トーマスと続けているポッドキャスト「Watts Occurring」で、ロウは下りの専門コーチについてその効果を信じていないとの立場を示した。
ロウの見方では多くの選手はコーナーの曲がり方を理解していても、レースの緊迫した場面になると体が固まり、実践できなくなる。問題の中心を技術の知識だけでは解決できない部分に見ている。
またNetcompany INEOSとDecathlon-CMA CGMでの自身の経験を踏まえ、専門コーチの指導によって以前より速く、あるいは安全に下れるようになった例を見たことがないとも語る。
こんなルークの見解に対してGは、一部の選手には技術的に改善できる余地があると反論した。
レース前に下りを速く走れと言ってもそれが選手への心理的プレッシャーとなり逆にマイナス効果となる場合もある。そこで体に覚えさせた技術によって自然と下りが速くなれば、余計な心理的プレッシャーを緩和させることもできるだろう。
どの分野でも上手い人間は余裕があるため余計な緊張をしない。しかし下手だとどうしても失敗してはいけないとの過度のプレッシャーや焦りを感じてしまうものだ。
さて、上述のようにガルの今シーズンの驚嘆すべき好成績は事前の準備とチームの支援が実を結んだ事例として紹介されている。
しかし、ただガルのその例だけでダウンヒル専門コーチの必要性に結論を出すことはできないし、技術力が高いことにこしたことはない。同時にトム・ピドコックのような超絶技術を持つダウンヒラーでも落車するときは落車するものではある。
ワールドツアーレベルのトッププロ選手にダウンヒル専門コーチは必要か不要かはいちがいには言えないのも確かだが、選手によっては有効なときもあるのではないだろうか。結局は選手の希望次第か。