Enter your email address below and subscribe to our newsletter

チームDSMは新素材ダイニーマ(Dyneema)を使用

チームDSMのウェアに使われる新素材Dyneemaと、ロードレースの安全性

Share your love

少し前にF1でとんでもない火災事故が発生した。フェンスに衝突し爆発的に激しく炎上するマシンの中から、まるで不死鳥のように奇跡の生還を果たしたのがチームHaas(ハース)のロマン・クロージャン。日本のマスコミでも大きく取り上げられたと思う(TV見ないので知らないが)。そのときの事故の動画をどうぞ。

マシンは真っ二つになり大きな炎をあげるも、クロージャンはコクピットから自力で脱出した。

この件では大きく2つの技術的なネタが話題となった。1つは、なぜマシンが真っ二つになるようなことになったのかというマシンの構造に関するネタ、そしてもう1つがF1が15年ぐらい前から継続的に取り組んできた安全性向上の施策である。この事故でドライバーが無事だったのは、まさにその長年の安全性向上への努力の結果と関係者・専門家は述べている。F1業界の努力を象徴する事故でもあった。。

さてこの時点で今回の記事で何を言おうとしているのかわかってもらえるだろう。そう、ロードレースでの安全性である。

ヘルメットの素材・組成についてはUCIにルールなし

F1とロードレースは全く違う環境・条件で行うスポーツであるため、比べることに意味はない・・・と断言するのもたしかに正論だが、見習うべき点はあるはず。それが上述のF1が長年取り組んできた安全策の拡大・充実である。

たとえばF1のヘルメットは防弾性能を有している。相当に頑丈である。

一方で、ロードレース用のヘルメットは、その「素材・組成」については実はUCIの規則にその制約・条件について明文がない。

素材・組成以外の点についてはいろいろ規定はされているのだが(通信機能や取り外し可能なカバーをつけてはいけないなど)、「素材・組成」については実は直接の規定はない。

ただ、いちおう「硬質なものでなければならない」という内容の文言はある。(参考:CLARIFICATION GUIDE OF THE UCI TECHNICAL REGULATION

この点は、両スポーツの違いからヘルメットが目指すべき保護機能の方向性が違うのであって、別にロードレースのヘルメットに防弾素材を使うべきだとか、できるだけ硬い素材にしろというような単純な話ではない。衝撃吸収と脳へのダメージ軽減という点では、硬ければ良いというわけでもないだろう。

ただ、一番大事な頭を守るアイテムであるだけに、素材・組成について何も規定がないのはちょっとどうなの?と思う。バイクのフレームやホイールには細かい規定があるのに。

選手のダメージ軽減になるか、ウェアの新素材ダイニーマ(Dyneema)

そしてウェアの素材そのものについても特にUCI規則には規定がない。だが、落車時の骨折は避けられないとしても、擦過傷を少しでも軽減できるような素材を使うような規定はあってもいいのではないか。「とにかく薄く・軽く」を追求したがるメーカーまかせではダメなのではないか?

この点、来年からチームDSMに変わるサンウェブの新ジャージに使われる(サンウェブでも使っていた)素材「Dyneema」が注目である。読み方はダイニーマ、あるいは国よってはイザナスという名称が使われたりする。

上のInstagramの画像を見てほしい。背中のCerveloのロゴの下に「Dyneema」の文字があるのがわかる。

この素材は東洋紡とオランダDSM社が共同で開発した新素材であり、超高分子ポリエチレン繊維である。東洋紡は「イザナス」、DSM社は「Dyneema(ダイニーマ)」という商標で登録している。(参考:DSMダイニーマ

実はこの新素材については、かつてこのブログでも紹介していた。ブタ自身すっかり忘れていた。

このダイニーマの特徴は、素材の分子量を既存の何十倍にもし、さらに分子どうしの結合もはるかに密に強くしたため、衝撃に耐える性能や、引き裂きに耐える性能がめちゃくちゃ高いことである。つまり、落車しても破れにくいジャージができあがるわけである。

このチームDSM(サンウェブ)のジャージのような取り組みを各チーム、各メーカーも展開して欲しいと思う。UCIとしても、とにかく薄く・軽くを追求するウェア界に対して、怪我の軽減という安全性の観点も求めるという意思表示として、そのような趣旨の規定をUCI規則にも入れるべきではないだろうか。



Share your love
piginwired
piginwired
Articles: 6430

6 Comments

  1. ダイニーマは、昔のバレーボールやバドミントンのネット上部に
    用いられていたスチールワイヤーの代わりに使用されている
    素材すので、耐久性も柔軟性もあるので、ジャージの素材には
    良いと思います。
    ただ、インクを乗せる(色を付ける)ことは可能なのか?
    きっと、できるんでしょうね!
    少しでも選手の怪我が軽減されることを祈ります。

    • スチールワイヤーの代わりとかすごいブヒね。そんな頑丈だとは。あと錆びなさそうのもスチールより便利なところか。
      インクは表面的に乗せるだけならいけるのかも?

  2. 豚さん指摘どおり、自転車競技界は体質というか思考が古臭いまんまですね
    まぁトラディショナルということもできますが、こと安全面に関しては革新的であってほしいものです…

    • 他にもレースに帯同する専属のドクターをもっと増やしたり、医療スタッフ・機材を載せる「メディカルバイク」を増やしたりとか、いろんな場面にすぐ駆けつけられるようにするとかいろいろやるべきことはあると思うブヒね。

  3. こんにちは
    オランダDSMの日本法人でダイニーマの事業開発をしております鳥野見(とりのみ)と申します。 何度もダイニーマについて取り上げてくださって感謝いたします。
    DSMとしては昨年より日本市場でダイニーマ(繊維)の紹介を開始いたしました。 当社ではユーザー製品を作っておりませんので、日本のメーカー様にダイニーマ糸を使っていただき製品に仕立てて頂きユーザー様にお使いいただく事になります。 今後皆様の安全安心に少しでも寄与できるよう日本のメーカー様にご使用頂ければと思います。

    以前に取り上げていただいたダイニーマxカーボンのバイクフレーム(プロトタイプ)は 本年4月末日本法人東京のオフィスに輸入しました。 これから日本のメーカー様にみていただく予定です。 日本メーカー様からダイニーマ製のバイクなどが発売される事になる事を期待して紹介して参ります。 

    • こんな辺鄙なブログにまさかのコメント感激ブヒ!
      しかも、ダイニーマの最新の動向まで書いていただきありがたき幸せ!

      コロナで大規模な商談会・イベントはやりにくいかもしれないブヒが、それでも少しずつバイクの進化を予感させる新素材のダイニーマが普及して身近なものになる日が楽しみブヒね!

Leave a Reply to piginwiredCancel Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

Stay informed and not overwhelmed, subscribe now!