乳酸ジェルはもう時代遅れ?次は乳酸エステルの時代か?

乳酸ジェルはもう古い? 新世代「乳酸エステル」がロードレースの補給を変える可能性

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進化する補給戦略

ポガチャル時代となった近年のロードバイクでは、これまでの補給食戦略に大きな進化・革命が起こっていると言えるだろう。

特にレース中の炭水化物の摂取量は、タフなレースになると1時間あたり120~160g、場合によっては200gにも達することもあると言われている。次の記事などでそうしたことを伝えてきた。

そして今年のツール・ド・フランス前からは「乳酸を食べる」という新しい概念に大きな注目が集まった。たとえば次の記事で乳酸ジェルというものを紹介した。

だが、どうやらこの乳酸ジェルよりもさらに新しい補給食として「乳酸エステル」というものが登場しつつあるようだ。

情報源:Are lactate gels already old news?

乳酸ジェル開発競争はすでに次の段階へ

数週間前まで、「乳酸をレース中の燃料として摂取する」という考えは、研究者の間では理論として知られていても、実際の商品化は難しいと考えられていた。

しかし現在では、

  • Exolactate
  • Enervit
  • SantaMadre

の3社が、それぞれ異なる乳酸ジェルを開発し、このうちExolactateは今年のツール・ド・フランスで某ワールドチームが実際に使っていたようで、そしてEnervitの製品を同じく今年のツール・ド・フランスでタデイ・ポガチャルが使っていたのが明らかになっている。

こうした動きに次いで、SoudalーQuickStepのスポンサーの1つでケトンサプリメントで知られるKetoneAidが、従来とは全く異なる「乳酸エステル」という技術を開発したようだ。

従来の乳酸ジェルが抱える課題

現在公表されている乳酸ジェルの多くは、「乳酸ナトリウム(Sodium Lactate)」を利用しているが、乳酸ナトリウムは乳酸とナトリウムが結合した塩であり、乳酸を摂取できる一方で、次のような課題があるとされる。

  • 乳酸量を増やすとナトリウム量も同時に増える
  • 味が悪化しやすい
  • 高濃度では浸透圧が上がる
  • 胃腸への負担の可能性がある
  • ジェルの濃度や容量にも限界がある

つまり、高いパフォーマンスを期待できるだけの乳酸を摂取しようとすると、逆にパフォーマンスが下がる可能性があるというわけだ。諸刃の剣?

KetoneAidが開発する「乳酸エステル」とは?

KetoneAidが開発している乳酸エステルは、乳酸をナトリウムではなく有機分子とエステル結合させたもので、体内へ取り込まれると、この結合が分解され、乳酸が放出される仕組みとなっている。

この方式には理論上、

  • より多くの乳酸を体内にとりこめる
  • ナトリウム摂取量を抑えられる
  • ジェル容量を増やさず高濃度化できる
  • 胃腸トラブルを軽減できる可能性

といった利点があると期待されているようだ。

KetoneAidは、この方法なら従来製品の3〜5倍の乳酸を供給できる可能性があると主張する。

科学的根拠は十分か?

ただしこうした新しい補給食の技術を支える科学的根拠は十分なのかといえば、これらの主張を裏付ける独立した研究機関による十分な研究はまだ存在しないのが実情だ。

現時点では、

  • 乳酸を摂取すると本当に持久力が向上するのか
  • 炭水化物120g/時以上の追加エネルギー源になるのか
  • グリコーゲン節約効果はあるのか
  • 実戦で十分な量を吸収・利用できるのか

こうした点に十分な科学的証拠はない。

つまり、乳酸エステルは「可能性のある技術」ではあるものの、その効果は現時点では「仮説」レベルでしかないと言えるだろう。

炭水化物の代替ではなく「追加燃料」

KetoneAidは、SoudalーQuickStepから当初、炭水化物の代わりに乳酸を利用したいからそうした製品を開発してくれとの要望を受けていたと語る。

しかし開発していく中で現在では考え方を変更し、

「炭水化物摂取量が限界に達した後、さらに追加できるエネルギー源」

として考えている。

もし乳酸が炭水化物とは別の酸化基質として利用できるのであれば、選手はより多くのエネルギーをレース中に利用できる可能性があるわけだ。

ただし、この仮説についても独立した研究による検証はまだ行われていない。

最大の課題は味?

記者はKetoneAidの乳酸エステル試作品を試飲したわけだが、その感想は強い酸味や強い刺激を感じるようなもので、簡単にいえば「死ぬほど不味い」というような味だったようだ。

決してレース中にスムーズに食べられるような味ではなかったとのこと。

そこで今後は濃度の調整も含めた味の改善も急務となる。

今後の普及は不透明

数年前までは1時間あたり120gもの炭水化物摂取は現実的ではないと考えられていたが、現在ではワールドツアーではそれ以上の補給を行う選手も珍しくない。

一方、ケトンも「革命的」と期待されながら、現在では主にリカバリー用途として利用される程度に留まっているようだ。

乳酸ジェルや乳酸エステルといった新しい補給食もレース中に爆発的な効果を発揮するようなものではなく、一時期もてはやされたケトンと同じようにあくまでレース後のリカバリー用途に限定された使い方になってしまうのか、それともレース中の補給食として新たな標準になるのかは今後の研究結果次第であり、今後の現場からの声次第だろう。

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