UCIがケトン使用について声明を発表

さきほどの記事でUCIから2026-2028プロチームライセンス申請状況が発表されたと書いたが、同時にUCIは最近話題のケトンを含有するサプリメントの使用について声明を発表した。下のリンクがそれだ。

UCI：UCI declaration concerning the use of ketone supplements by cyclists

ケトンの効果について

何年か前からこのブログでもケトンについてはいくつか記事を書いた気がするが、ロードレースに限らず陸上競技など他スポーツにおいてもケトンは普通に摂取されるようになっている。特にエンデュランス系スポーツでは普及が拡大しているだろうか。

ちなみにChatGPTで「陸上競技とケトンについて」調査させると次のような回答があった。

ケトンは外因性ケトンは血中β-ヒドロキシ酪酸（BHB）値を確実に上昇させるとされる。また一部で回復や過負荷（オーバーリーチ）対策、超持久系での認知維持などの有益性が報告されている一方、短中距離や高強度のパフォーマンスを低下させた研究もある。

安全面では消化器症状や酸塩基バランスへの影響が指摘されている。WADA（世界アンチ・ドーピング機関）による禁止対象には含まれていない。

このChatGPTの回答を信用すれば、ケトンの摂取に実際に効果があるのかと言われると、科学論文などでも効果あるとするもの、ないとするもの、逆にパフォーマンスを下げるとするものなど意見は様々で統一的な科学的見解はないというのが現状のように思われる。それに効果があるとする場合でも、非常に限定された条件でのみ効果があると解されるものだったりするようだ。

ただそれでもケトンのサプリメントなどが普及しているのはスポンサーの営業努力の賜物かもしれない。

UCIのケトンについての見解

もともとこのケトンについてはプロチームの多くが参加して作られた団体MPCC（the Mouvement Pour un Cyclisme Crédible）は2024年の段階でその使用について反対の立場を明確にし、かつUCIに対してもその立場を明確に表明するよう促していた。

今回の声明はその催促を受けてのものなのかもしれないが、ひとまずUCIは今回の声明においては次のように述べる。

The use of dietary supplements containing ketone bodies (ketones) has become popular in endurance sports, particularly road cycling, since the publication of scientific findings of a study carried out in 2016. Results of the study suggested that ketones taken before or during exercise could improve cycling performance. However, these results were not confirmed by subsequent studies, and there is now a consensus that such supplements have no effect on performance during endurance exercise.

However, several ensuing studies then drew attention to the potential benefits of ketones when it comes to the rapidity and quality of post-exercise recovery. Ketones were found to have added value in terms of the speed of muscle glycogen resynthesis and endogenous EPO production.

As there is no compelling evidence that ketone supplements enhance performance or recovery, the UCI sees no reason for them to be used. Therefore, the UCI does not recommend the inclusion of such supplements in riders’ nutritional plans.

この部分の簡単に要訳すると、「以前の研究ではケトンに効果あるとされたけど、最新の研究結果ではケトンに効果はない。だから選手たちが使う理由はない。したがってUCIとしては使用をオススメしない」

というものであり、言い方としてはあくまで「使うのをおすすめしない」という消極的な表現であり、明確に「禁止または不使用の推奨」ではないというのがポイントだ。

したがって現時点ではWADAの禁止物質にもなっていないし、UCIが禁止する物質にもならないわけで、ぶっちゃけただの現状維持と方針を明らかにしただけという感じだ。