ポガチャルは乳酸を食べているのか?ツール・ド・フランスで乳酸ジェルを使うワールドチームは?

ツール・ド・フランスで話題の「乳酸ジェル」とは?Exolactateが提案する次世代の補給食

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情報源:Exolactate gels are the buzz of the Tour de France: A new super fuel or just more snake oil?

これまで疲労物質の代表格というイメージだった乳酸だが、近年の研究では実は疲労物質ではなく、乳酸は疲労を軽減させたり、エネルギー源にもなるとされている。

そんな研究から生まれたのが、乳酸を補給食として積極的に摂取していくという考え方だ。これについては以前【補給食に革命か?「乳酸ジェル」がツール・ド・フランスを変える?】という記事で紹介していた。

そしてそんな乳酸を実際に現在開催中のツール・ド・フランスであるワールドチームが補給食にしているらしい。

ツール・ド・フランスで話題の「乳酸ジェル」とは?Exolactateが提案する次世代の補給食

2026年ツール・ド・フランスの舞台裏で、ある新しい補給食が注目を集めている。

その正体は、外因性乳酸(exogenous lactate)を配合した「Exolactate」のエナジージェルだ。

「乳酸」と聞けば、疲労や高強度運動を連想するサイクリストも多いだろう。しかし近年の運動生理学では、乳酸を単なる疲労物質として扱う考え方はすでに大きく変化している。

そして今、その乳酸を「体内で作る」のではなく、補給食として外部から摂取するという新たなアプローチが、世界最高峰のロードレースであるツール・ド・フランスでテストされているらしい。

「乳酸=疲労物質」という古いイメージ

Exolactateの開発に携わるのは、運動生理学・代謝分野の博士号を持つAitor Viribayだ。

彼はかつてINEOS GrenadiersでHuman Sciences部門を率い、現在はランニングブランドSalomonのパフォーマンスディレクターを務めている。

彼は、乳酸が長年「悪者」とされてきた状況を、事故現場に駆けつける救急車に例えている。

事故現場には常に救急車がいる。しかし、救急車が事故を引き起こしているわけではない。

同じように、疲労が生じる高強度運動では乳酸濃度が上昇する。そのため、かつては「乳酸が疲労を引き起こす」と考えられてきた。

しかし現在では、乳酸は単なる代謝の廃棄物ではなく、エネルギー源であり、細胞間の情報伝達にも関係するシグナル分子として理解されている。

この乳酸の役割に着目したビリバイは、約7年間にわたり「乳酸を外部から摂取し、スポーツパフォーマンスに利用できないか」という研究開発を続けてきた。

Exolactateの基本的なアイデアは非常にシンプルだ。乳酸がエネルギー源になるのであれば、外部から摂取できればいいのでは?というものだ。

通常、運動中に体内で生じる内因性乳酸(endogenous lactate)は、高強度の解糖系エネルギー代謝に伴って生成される。つまり、アスリート自身が高強度運動を行った結果として生まれる乳酸だ。

一方、Exolactateが注目するのは外因性乳酸(exogenous lactate)である。

ビリバイの説明では、外部から摂取する乳酸は、アスリートが高強度の解糖系運動によって自ら生成する必要がない。言い換えれば、運動による生成コストを負わずに乳酸を供給するという発想だ。

これまで「できるだけ減らしたい」と考えられてきた乳酸を、あえて補給するという点で、Exolactateのコンセプトは、従来のスポーツにおける乳酸のイメージを大きく反転させるものとなっている。

Exolactateジェルは炭水化物40g+外因性乳酸5g

Exolactateが開発した最初の市販製品は、一般的なエナジージェルに近い形態を採用している。そのジェル1つ分には、以下の成分が含まれる。

  • 炭水化物:40g
  • 外因性乳酸:5g

使用方法も特殊なものではない。

通常のスポーツジェルと同じように、運動前または運動中に摂取すればいい。

注目すべきポイントは、乳酸を単独の「魔法の成分」として扱っているわけではないことだ。あくまで40gの炭水化物を含む通常の補給食に、5gの外因性乳酸を組み合わせているのであって、炭水化物がいらないというわけではないのだ。

現在のロードレースでは、1時間あたり100gを超える炭水化物を摂取する高炭水化物補給戦略が広がっているが、Exolactateは、こうした既存の補給戦略そのものを否定したりものでもなければ、大革命を引き起こすようなものでもない。従来の炭水化物補給に乳酸という新たなエネルギー源を追加する可能性を提示するものである。

2026ツール・ド・フランスで乳酸ジェルを使っているワールドチームは?

さらに興味深いのは、Exolactateが単なる研究室レベルの製品ではないことだ。

今開催中の2026年ツール・ド・フランスで、あるトップレベルのワールドチームがExolactateジェルを実際に使用していることが明らかにされている。ただし、Aitor Viribay氏は秘密保持契約を理由にチーム名を明らかにしていない。

現在、そのチームはExolactateジェルへの独占的なアクセス権を持っており、一般販売はツール・ド・フランス終了後まで行われない予定だ。

この状況から、ロードレースファンの間では「どのチームが使用しているのか」という推測も広がっている。一部ではタデイ・ポガチャルが第6ステージで使用したのではないかとの憶測も出た。

しかしUAE Team Emirates-XRGのニュートリションスポンサーであるEnervitは、ポガチャルがExolactateジェルを使用したとの見方を否定している。

したがって現時点では、ツールで使用しているチームは不明だ。

外因性乳酸は補給戦略を進化させるのか?

ロードレースの補給戦略は、ここ数年で劇的に変化した。

かつて1時間あたり60~90g程度が目安とされていた炭水化物摂取量は今では1時間120~160gというのが普通になっている。

選手がレース中に摂取できるエネルギー量が増えたことで、長距離ステージ終盤でも高い出力を維持することが可能になった。

こうした補給戦略の進化の中で、Exolactateは異なる方向からアプローチしている。炭水化物をこれ以上増やすのではなく、乳酸を外部から得ることでエネルギー源とするわけだ。

もし外因性乳酸がエネルギー基質として効率的に利用され、細胞レベルで運動をサポートできるのであれば、ロードレースなど持久力系スポーツの補給戦略に新たな選択肢が加わる可能性がある。

だが一方で、現時点では慎重な見方もある。ツール・ド・フランスでワールドチームが使用しているという事実は大きな注目材料だが、それだけでパフォーマンス向上効果が証明されたことにはならない。

2026年ツール・ド・フランスでの実戦投入を経て、Exolactateがどのようなデータを示すのか。そして一般販売後、プロ選手だけでなくアマチュアサイクリストにも広がるのか。

ロードレース界の次世代補給食として、外因性乳酸ジェルの今後に注目だ。

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