ロードレースは八百長が日常?スポーツとしての特殊な文化

ロードレースには他のスポーツと違う点がいろいろある。競技として明文化されているルールはもちろんだが、集団(プロトン)で走るゆえに集団内で醸成された独特の文化も存在する。その文化は、ロードレース特有の紳士協定という言葉で表現されたりもする。

他のスポーツではありえないが、「本気で勝利を狙うために敵・ライバルと協力する」というのも日常茶飯事。さらには、「勝てるけど、あえて勝ちをゆずる」というのも文化の1つとして息づいている。もちろんレースの種類、そのときの状況、チームの方針によっても変わるが。

たとえば、ツール・ド・フランスなどのグランツールでは総合1位さえ確保できれば良く、その日のステージ優勝はゴールまでいっしょに走ってきた別チームの選手にゆずるといったことが普通にある。

こうした行為は美しい文化のあらわれとも考えられるが、一方では、2010年のモニュメントのリエージュ(Liège-Bastogne-Liège)を思い出してほしい。

この大会で優勝したのはアスタナの大佐ことアレクサンドル・ヴィノクロフ(Alexandre Vinokourov)。2位がアレクサンドル・コロブネフ(Alexander Kolobonev)

しかし、レース後にある疑惑は浮上した。それは、ヴィノクロフがレース中にコロブネフに対して「俺に勝ちを譲れ、そうすれば対価を支払う」と話を持ちかけたとの疑惑だ。もし本当ならばこれは完全に八百長と認定してもいいだろう。

この疑惑については、何年か前にこのブログでも紹介した。下の記事がそれだ。

関連記事: 【悲報】ヴィノクロフ大佐、懲役6か月&罰金1200万円を求刑される。2010リエージュでの談合事案

二人は訴追されることになったが、結局「具体的な証拠がない」として無罪が確定している。

関連記事:ヴィノクロフ大佐の無罪が確定

上述のように、仮に金銭を対価として勝利を譲るよう誘引するのが八百長だと定義すれば、金銭の支払いさえなければ八百長ではないとなる。

だが金銭の支払いさえなければOKなのか、といった疑問もあるだろう。特に他のスポーツからすると、「いやいや、そもそも勝ちを譲るとかないわ」という考えにもなるだろう。

はたしてロードレース特有の「美しい文化」は八百長なのか?八百長そのものではなくとも、グレーゾーンと考えるべきなのか。

そんな美しい灰色とも言うべき、ロードレース特有の文化に光を当てて考察したちょっとした論文(というほどのものではないが)が公開されている。下のリンクがそれだ。

論文?:The grey zone between tactics and manipulation: The normalization of match-fixing in road cycling

情報源:DOES ROAD CYCLING HAVE A PROBLEM WITH MATCH FIXING?

ただ会員登録しないと全文が読めないようで、そうでなければ概要部分しかわからない。

ブタも概要しか読んでないので、中身についてはどうこう書かない。そんなのがあるよと紹介するだけ。

ただ改めて考えみると、ロードレースファンにとっては当たり前の文化でも、他スポーツのファンから「え、それおかしくない?」と言われれば、やはり「ぐぬぬ・・・」となかなか説明しにくい文化かもしれない。

比較的(?)ロードレースと近いと思われる駅伝でも、さすがに勝ちを譲るとかないだろう。チーム戦略として予選会では本気を出さないとかはあるかもしれないが。本大会で勝ちをゆずるとか、ライバルと協調して交代で風よけになりながら二人で差を広げていくなどはないだろう。

他スポーツのファンが初めてロードレースをみたときに感じるわかりにくさも理解できる。そうしたロードレース独特の文化や戦略が、ロードレースの醍醐味であり、おもしろさの本質でもあるのだが。

UCIルールとしてもいちおうは「真剣に誠実に戦え」という内容のルールはあるのだが、ロードレースの美しい文化とどうやって矛盾なく調和させるのかをしっかり考えていくと理論的にはなかなか難しいと言わざるを得ないのではないか。

さてロードレースファンはどこからがアウト、裏返せばどこまでがグレーゾーンと考えるだろうか。人それぞれ違うだろうが、一度ファン同士で議論してみるのもおもしろいかもしれない。

ただ酒が入ってない状態のほうがいいやろね()

8 thoughts on “ロードレースは八百長が日常?スポーツとしての特殊な文化

  1. 土井さんか増田さんの本か忘れましたが、レースで最終グループに残って6位かなんかになったときに二千万円くらい?で勝利買えただろと監督に怒られたと言う話がありましたね。うるおぼえですが。
    向こうでは、三大レース以外では、(三大レースでもやっていると言う話もありますが、、。)それなりに行われているのは暗黙の了解らしいですね。

    1. プロトンにそんな裏の世界があるとは・・・
      それにしても二千万とは、グランツールやモニュメントでなくても「けっこう高い」と感じるけど、どうなんだろう。
      てっきり数百万ぐらいかと。
      そういった大きなレースではなくても、それだけの価値があるのか・・・
      逆にいえばロードレース自体がなかなか価値があることの証明なんだろうか?

      仮にそれが本当だとして、その二千万は実質的に選手個人が負担するのか、チーム(スポンサー?)が最終的に負担するのか知りたいブヒね。

      1. HCクラスのレースでせいぜい数千ユーロで買えるよ、と言うむしろ安さを強調するお話です。
        土井ちゃんの『敗北のない競技』は読みものとしても面白いので
        とてもおすすめ

        1. その本はブタもずっと気になってたブヒ。評判も高いようなので、正月の間にでも読んでみるブヒ!

  2. いつも楽しく見ています。
    ヴィノクロフ大佐、個人的には好きなんですが…2012年のロンドンオリンピックのゴール前、今にしてみるとちょっとクサいなと思います(笑)。

  3. 85年のツール・ド・フランスではグレッグ・レモンがベルナール・イノーに総合優勝を譲っていますね。同じチーム内で確執があったのは有名なエピソードでした。確かレモンは総合優勝をイノーに譲る代わりに2千万円を手にしたんだとか。十分レモンは勝ちに行けたレースでしたが、イノーに5勝させるのがチームの戦略でしたね。イノーは来年は勝たせるから今年は俺に譲れと言ったものの、翌年のツールはイノーの裏切りでハラハラしたレースでした。同じチーム内で確執があるなんて当時は衝撃でした。

    1. やはりアメリカ人よりフランス人に偉業を達成させたいという思惑あったのかなと思うエピソードブヒね。

      当時で2千万円なら今はどれくらいかな?ショービジネスとしての価値の増大などを考えると1億円ぐらい?もっとになるのかな?
      他のスポーツでもチーム内でエース争いとか4番争いとかあるだろうけど、ロードレースはそういった内部の人間関係がものすごく濃密な感じがするブヒね。
      人間くさいスポーツと言われる所以かも。

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